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吉田麻也が痛恨の4失点を語った。
技術、集中力、そしてスアレス。  

text by

西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/08/19 12:10

吉田麻也が痛恨の4失点を語った。技術、集中力、そしてスアレス。 <Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ウルグアイ戦の前には「日本人やアジアのFWが持っていない感覚を持っている」とスアレスに対して誰よりも強い警戒心を持っていた吉田だったのだが……。

パスミスではなく、クリアミスだった3失点目。

 ウルグアイ戦の3失点目、クロスに対して吉田が蹴ったボールがスアレスの目の前にこぼれ、それを叩き込まれたシーン。

 遠藤へのパスミスのようにも見えた場面だったが、実は吉田はそんなリスキーなパスではなく、前方斜め(タッチライン方面)にクリアするつもりだったという。

 判断は、間違ってはいなかった。

 問題はキックミスだった。

「クロスも速かったので、思い切り振りかぶって蹴ると、あたりが悪くて自分のゴールやゴールラインの方向に行く可能性があった。だから振りを小さくして、浮き球で巻くようなクリアボールを蹴ろうとした。でも、ボールが滑ってしまって、キックの瞬間に引っかかり、あんな形になってしまった」

 結果的に、詰めが甘いと周囲に取られてしまうようなミスが、失点に直結した。話を聞いていると少しの不運も重なったようだが、それでもあの場面では、ボールをしっかり蹴り出すという意識と技術、そして集中力がCBというポジションの選手には不可欠なのである。現時点で、やはりあそこで致命的なミスが出てしまう選手を評価することはできない。

そろそろ「こういう経験」を繰り返すことに、終止符を打つべき日が。

 吉田は間違いなく『考える選手』である。多くの選手を取材してきて感じることだが、これは誰もが持ち得る要素ではない。

 現状では、言葉や気持ちだけが先行しているだけの選手として、吉田は評されてしまうのだろう。優秀なプロの選手とは、考えるだけにとどまらず、それを実際のプレー、結果として周囲に見せつけることができる人間を指すのである。

 批判の矢面に自ら立とうとする、吉田。

 彼は自分の言葉を表立って語ることが、プロとして当たり前の役目だと考えている。そして一旦言葉を発したのであれば、その責任や覚悟は中途半端なものであってはいけない、と思っている。進んで多くを語ろうとする彼は、語らない他の選手たちよりも強い気概を持たざるを得ない状況へと、自らを強制的に追い込んでいく。その気概を責任感に変え、全身全霊のプレーで自らの成長を体現するために――。

 ここ数カ月、吉田が決まってこぼす言葉がある。

「こういう経験を繰り返してこそ、選手として一皮、二皮剥けて大きくなると信じたい」

 この言葉を、本人は当然のこと、彼を見守る誰もが信じ続けていることだろう。ただし、いつまでも“こういう経験”を繰り返すことが許されないのが、プロの世界だ。そろそろ、そうした苦悶にも、終止符を打たなければならない。

 乗り越えられるか、否か。

 まだまだ長いサッカー人生だが、吉田はキャリアにおいて1つの勝負所に差し掛かっている。

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