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やはり迷采配!? 真弓監督に問いたい、
「勝ちに行く」という言葉の真意。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/10/13 13:00
あの言葉の真意を図りかねている。
レギュラーシーズンの終盤戦。タイガース首脳陣が決まり文句のように口にしていた言葉は、果たしてどういう意図を持っていたのか……。
僅差で救援失敗が続いていた藤川球児が、試合後、無理矢理平静を装って取材に応えている姿を目の前にすると、首脳陣たちのあの言葉がどうしてもオーバーラップしてくるのだ。
「勝ちに行きます」
「勝ちにこだわった起用を選択する」
今シーズンを通し、真弓明信監督や久保康生投手コーチはやたらとこの言葉を口にしていたのだが、阪神にとっての「勝ち」というのは、どの時点でのことを示すのだろう。
目の前の試合に勝つことなのだろうか?
それともレギュラーシーズンのトータルで勝つことを目指すことなのだろうか?
どちらも重要な目的であるし、簡単には答えられない選択ではあるのだが、この目的意識の違いは、采配の上で大きく影響してくるのだ。
憔悴しきった藤川が敗北の責任を一身に背負っていた姿。
ここ数年、阪神にとっての懸案事項となっているのは、シーズン終盤になって救援陣のパフォーマンスが極端に落ちてしまうことだった。
序盤で早々に首位戦線から脱落し結局4位に終わった昨年は、救援陣がチームの命運を分けるほどのシビアな試合の流れがそれほど生まれなかった。
しかし、阪神ファンなら覚えているだろう。中盤から大失速し、13ゲーム差をひっくり返されて優勝を逃した末に臨んだ'08年のクライマックスシリーズ(CSの対中日戦)のことを。
試合を決めたT・ウッズのホームランは、藤川ら救援陣にシーズンを通して頼り切った末に招いた、最悪の結末だった。4年連続で毎年60試合以上も登板させられていた藤川の表情には、敗退の責任を一身に背負いこみすっかり疲弊しきった男の顔があった。
彼のその姿に心を打たれたファンもいただろう。
筆者も、そのうちの一人である。