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<三浦知良と柳沢敦の往復書簡> 僕のサッカー人生で最も「やりやすい」男。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byMegumi Seki
posted2010/12/11 08:00
【カズから柳沢へ】 僕のサッカー人生で最も「やりやすい」男。
8月7日の岡山戦で、今シーズン初ゴールを決めることができた。J2最年長得点記録を更新した(43歳5カ月12日)わけだけど、自分としてはそこはあまり気にしていない。去年もおととしもゴールを決めた試合は勝てなかったので、今回はチームの勝利に貢献できたことが何よりも嬉しいね。そしてチームメイト全員がベンチから出てきて祝福してくれたこと、サポーターの声援と一体になれたことが嬉しかった。みんなには本当に感謝したいと思います。
今回はヤナギ(柳沢敦)からの手紙。僕は長いことやってるから、いろんな人と2トップを組んできた。よく人から「やりやすいのは誰ですか?」と聞かれることがあるんだけど、そんな時はいつも「柳沢」と答える。僕にとってヤナギはそういう選手なんだ。一緒にやっていると、彼の存在は本当に助かるんだよ。位置取りがいいし、動き出しもいい。サッカーをよく知っていて、味方を生かすことができる。
ドリブルもパスもゴールもアシストも、等しく価値があるもの。
サッカーに対する考え方が共通している部分もある。それは「ゴールがすべてじゃない」と思っていること。僕は「点を取るのが仕事です」ってあんまり言わないけど、ヤナギもあまり言わないよね。
僕らは点を取ることにすべてを捧げてるわけじゃなくて、ドリブルもパスもゴールもアシストも、自分のなかでは等しく価値があるものなんだ。そういう共通点が、今でも一緒にやりたいと思える理由なんだろう。
「やりやすい」というのは、一緒にやった者にしかわからない感覚だと思う。僕にとってどのような選手が一番やりやすいか。それはプレー中に必ず視界に入ってきてくれる選手なんだ。
数少ないけど、一緒にやった試合は今でもよく覚えている。
たとえば相手を背負いながらボールを持っているとき、視界に入ってきてくれると助かるんだよね。パスを出してもいいし、おとりに使ってもいい。こっちのオプションが増えて、前線で孤立することがなくなる。そういう意味でヤナギはすごくやりやすい。もちろん、高木(琢也)やゴン(中山雅史)、武田(修宏)など、代表で一緒に組んだFWはみんなレベルが高いし、やりやすかったけど、その中でも特に、と聞かれると、僕にとってはヤナギなんだよ。
数少ないけど、一緒にやった試合は今でもよく覚えている。最初は、'98年2月にオーストラリアでやった日本代表候補合宿だった。地元クラブとの練習試合で、2トップは僕と初めて代表に呼ばれたヤナギ。試合が始まってすぐに「やりやすい」と思った。短い時間だったけど、彼のポテンシャルの高さを十分に感じたね。
最後に一緒にやったのは、'00年のハッサン2世杯のジャマイカ戦。この試合では2人ともゴールを決めたんだ。それからは一緒に組む機会はないけど、もっといろんな局面でやりたかったと思う選手だし、今でもそう思ってる。