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ザックジャパン控え組の旗頭、
中村憲剛の「確固たる意思」。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2013/07/10 10:30

ザックジャパン控え組の旗頭、中村憲剛の「確固たる意思」。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

J1再開後の初戦、中村憲剛は自身のFKによるゴールを含め3得点に絡む活躍。鹿島相手に4-2の勝利をおさめた。

コンフェデを経て、判断がコンマ何秒か速くなっている。

 サッカー解説者でスポーツジャーナリストの中西哲生さんは「コンフェデを経て、判断がコンマ何秒か速くなっている。そのコンマ何秒かが大きい。彼はそれを強く意識しているように見えた」と感想を語ってくれたが、本人が判断スピードを上げてプレーしようとしていることは筆者が見ていても伝わってきた。

 中村は試合後、こう語った。

「判断のスピードを上げることは意識してやってます。チームメイトにも(判断が)速い選手はいるので、そことうまく合わせてやっていければ全然できるようになると思う。でも(世界は)もっと速い。今日でも何回か取られているし、そこはまだまだなんですけど」

「世界」を間近に置くゆえのチャレンジ。ミスもなくはなかったが、そのミスを忘れさせてしまうほどの輝きを放つパスが多かった。

 特にレナト、大久保とのコンビネーションは圧巻で、鹿島の守備を翻弄したと言っていい。あっという間に敵陣まで迫るカウンターは、鹿島にとって脅威だったに違いない。

 コンフェデでは得がたい経験を手にした。

 中村は終了間際に投入されたイタリア戦と、77分に入ったメキシコ戦の2試合に途中出場。トップ下に入ったメキシコ戦ではあちこちに顔を出してボールを受けながら、チームのパスのリズムを取り戻すことに一役買った。ここで流れを変えたことが、終盤の岡崎慎司のゴールにつながっている。短い時間でも試合に出るときのイメージを持っていたからこそ、そして心身ともに準備ができていたからこそ、流れを変えられた。

 3試合計270分のうち、試合に出たのは20分に満たない。ベンチで、またはアップしながら250分以上を過ごしたわけだ。だが彼はピッチの外からでも世界を体感しようとし、そのイメージを必死に働かせようとした。

起用されたときにどうやって自分の色を出せるか。

 控えの立場だろうが、腐ることなく準備をしてきた。その姿勢が、日本に戻ってからの充実に表れているように思えてならない。

 グループリーグで戦ったイタリアもメキシコも、メンバーを入れ替えながらチームの総合力で戦っていた。23人、ひとりひとりの力が大切なんだと中村も世界の舞台で実感を持ったはずである。

 彼はメキシコ戦後、こう言葉に力をこめている。

「(W杯で上に行くためには)総合力が大事になってくると思う。今控えの立場にいる選手たちは、起用されたときにどうやって自分の色を、チームのために出せるか。誰々がいないからダメじゃなくて、この選手が入ったらこういう形になるとか、そういう力を自分自身、つけておかなきゃならないと思っている」

 最後に崩し切る縦パスを世界仕様にする。精度、パススピード、判断スピード……「自分の色を、チームのために出す」を彼は早速、実践しようとしているのだ。

【次ページ】 東アジアカップの日本は、きっと中村のチームになる。

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