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日本人内野手は“実力不足”なのか!?
田中賢介、外野コンバートの裏事情。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/07/08 10:30
スプリングキャンプでは内野手としてそつのない守備を見せていた田中賢介だが、スローイングに変化をつけた結果、送球難が再発。外野手に転向し、3Aフレズノ・グリズリーズからメジャー昇格を狙う。
31歳にしてメジャー挑戦を決意し、今シーズンからジャイアンツとマイナー契約を結んだ田中賢介が大きな“岐路”に立たされている。
シーズン開幕から所属しているジャイアンツ傘下の3Aフレズノ・グリズリーズで、6月18日に突如として外野手へのコンバートが言い渡されたのだ。
田中と言えば、二塁手として2006年から5年連続ゴールデングラブ賞を受賞した名内野手。外野手の経験は2005、2006年の2シーズンでわずか7試合に出場したのみだ。
日本ハム時代を知るファンからすれば、かなり驚きの配置転換に映るのではないだろうか。
「やれと言われればやらなければいけない世界ですから。結果も出ていないし、仕方のない部分もあると思う。とりあえず(二塁手の)練習は引き続きやりながら、レフトを守ることでいい勉強にもなると思います」
今回のコンバートに対して、田中自身は前向きに捉えようとしている。
そもそも今年2月にキャンプ入りした際には、内野用グローブの他に外野用グローブも持参していた。
開幕メジャー入りを果たすべく、複数のポジションを守れるという首脳陣へのアピールでもあったが、結局キャンプでは二塁のほか、三塁、遊撃を守ったのみで外野守備の機会はなく、シーズンが開幕してもほぼ二塁に固定されていた。
外野守備は試合で慣れるしかないというマイナーの現実。
今回、シーズン途中での外野コンバートとなったわけだが、それは決して楽なものではない。
「外野に守備コーチはいないし、ノックもない。守備について教えてくれる人もいないし、何とか自分で練習するしかない」
田中がそう語るように、マイナーリーグは監督、打撃コーチ、投手コーチの3人体制が基本で、後は巡回コーチがマイナー各チームを回ってくるだけ。守備についてじっくりと指導を受ける機会はほとんどない。とにかく試合で場数を踏みながら慣れていくしかないのだ。
今回のコンバートについてフレズノのボブ・マリアノ監督は以下のように説明してくれた。
「ジャイアンツのフロントからの指示だ。タナカを先発として数多くの試合で起用するため、外野手として彼の適性を見極めることになった。チームの事情として、メジャーから内野手が降格してきたことと、他の選手のコンバートの影響もある。もう3Aにいる限りはタナカを二塁で起用する予定はなく、左翼もしくは指名打者で出場してもらうことになるだろう。
外野は日本でもある程度の経験があると聞いているし、慣れるまで多少時間が必要かもしれないが、タナカの身体能力ならば必ず適応してくれると考えている」
同監督の言葉通り、選手の配置換えは所属チーム監督の責任だけで行なわれるものではなく、すべてはGMを中心とするフロント陣が決定することである。つまり田中をジャイアンツというチームの全体像から判断して、外野へのコンバートが決定したわけだ。