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なでしこへの対策が窺えた欧州遠征。
東アジア杯で世代交代は進むのか?
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byGetty Images
posted2013/07/02 10:30
イングランド戦で、敵選手を引き付けプレーする大儀見。この遠征では、ブンデスリーガでの経験を十分に活かした活躍を見せてくれた。
欧州遠征に出発する前の段階で首をひねってしまった点を2つ、先に挙げておこうと思う。
まず、遠征に先立つ代表合宿と壮行試合の場所として、なぜ鳥栖を選んだのか?
もちろん、鳥栖という街自体に何か差し障りがあるわけではない。タイミングの問題だ。梅雨の真っ只中に、降雨が見込まれる土地をわざわざ選んだことが解せないのだ。事実、試合日も含め、合宿日程の半分以上が雨。せっかくニュージーランドを招いた親善試合も大雨の中での開催で、パスやドリブルといった日本の武器の威力がかなり削がれる結果となった。実戦を通したチームの現状確認を充分に行えなかったのは、いかにももったいない。
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これは今回だけでなく2011年の、女子W杯の際も同様だった。
愛媛で行った直前合宿と壮行試合の韓国戦も雨に祟られ、予定していたトレーニングメニューは100%消化できず、選手の意図通りにパスがつながるピッチ状態で試合を行うこともできなかった。
女子サッカーの全国的な人気獲得と普及のため、なでしこ合宿を日本各地で実施している日本サッカー協会の方針は素晴らしいし、事実大きな効果を上げていると思う。しかしそのために肝心の代表チームが犠牲を強いられては、本末転倒だ。梅雨時に代表活動があるのなら雨の確率が低い土地――例えば北海道――で連日しっかり追い込んだ練習を行い、壮行試合を開催するべきではないか。心置きなく選手の見極めやチームの最終調整ができるし、全国普及という目的にもかなうのだから。
若手選手たちのトライアル期間にするべきだったのでは?
そしてもうひとつ疑問に思ったのは、佐々木監督が代表合宿招集メンバーの発表会見時に、
「現在のベストメンバーを選びました。(7月の)東アジア杯までは結果を意識しながら進歩させていきたい」
と語っていたことだ。そして欧州遠征ではさらに絞り込まれ、ほとんどがドイツ女子W杯とロンドン五輪の経験者で構成されることになった。代表常連組のベースアップも2013年の目標のひとつに挙げている監督にとっては、妥当な人選だったのかもしれない。
しかし、そこまで勝ちにこだわる必要があるのだろうか。
今年は、女子W杯や五輪につながるアジア予選がなく、フル代表が出場する公式戦は東アジア杯のみ。3月のアルガルベ杯のように代表未経験の中堅や若手を試し、新戦力の底上げを図るには絶好の年なのだ。アルガルベ杯前に佐々木監督自身が表明していた通り、東アジア杯までをキャップ数の少ない選手のトライアルの場にできれば、非常に理にかなった強化プランとなるはずだった。
確かに大会3連覇がかかっているものの、東アジア杯では優勝よりも、使える新戦力を1人でも多く発掘できる方が、よほど大きな収穫だ。
そこで見出した戦力と常連組との融合は、9月に日本で2戦が組まれている国際親善試合からでも決して遅くはない。