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なでしこへの対策が窺えた欧州遠征。
東アジア杯で世代交代は進むのか?
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byGetty Images
posted2013/07/02 10:30
イングランド戦で、敵選手を引き付けプレーする大儀見。この遠征では、ブンデスリーガでの経験を十分に活かした活躍を見せてくれた。
なでしこを徹底分析して試合に臨んでいたドイツ。
ドイツ戦は雨を含んだピッチでの試合となり、なでしこ向きではなかった面はあるが、2試合とも劣勢に立たされる時間が長かったのは、日本に対する処方箋が欧州強豪国の間ですでに共通認識として出来上がりつつあるからだろう。
いつまでもなでしこのモダンなサッカーに驚いているばかりでなく、ヨーロッパの国々もなでしこのスタイルを消化し、着実に進化してきているのだ。
ことドイツにおいては、完全に世代交代を完了し、しかも以前にも増して才能あふれる選手が台頭してきていることに目を見張らされた。
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今年は7月に女子ユーロが開催されるので、ドイツにとっては今回の日本戦が最終調整の場だった。だから前回W杯時とはすっかり顔ぶれが変わった先発陣は、現時点での最強布陣なのだ。前回女子W杯やロンドン五輪のメンバーから入れ替わったのは、先発陣が負傷中(澤、近賀、鮫島)のボランチの一角と、両サイドバックのみだった日本とは、いかにも対照的だ。
しかもドイツは90分を通し、新旧織り交ぜた控え選手を試してもいる。対する日本は交代でも後手に回り、投入したのはすでに力量が把握できているベテランや中堅だった……。
ライバル国ほど進んでいない、なでしこの世代交代は大丈夫か?
冒頭の論旨と矛盾するようだが、経験豊かな選手を使い続けること自体に、問題があるわけではない。
'08年北京五輪時の中心選手の多くがいまだに主軸を務めているのは、現在FIFAランク1位のアメリカも同じだ(ただしFWモーガンなど、若い大黒柱も育ってきている)。顔ぶれの変化が少なくても、要は強ければいいのだ。現有戦力で次の女子W杯や五輪を乗り切れる見込みがあるのなら、思い切った世代交代はそれらの大会を終えた後まで持ち越す手もある。
だが、「現在のベストメンバー」で臨んだはずの今回の2連戦は、パフォーマンスそのものが芳しくなかった。
岩清水と宇津木は安定したプレーを見せたが、その他の守備陣は軽率なミスを連発し、無用なピンチを度々招いた。
また、相手のプレスが弱まった時には持ち前のパスワークが発揮できたものの、全体に攻撃は単調、単発だった。宮間、阪口の両ボランチは前線へ長短のパスを供給する役目については、それぞれの所属クラブでのプレー同様、再三決定機を創出した。だが、自身でシュートを打つ意識が2人ともやや薄く、そのせいでアタックの厚みに欠けた。持てる得点能力に疑いはないのだから、宮間、阪口にはもっと積極的に前線へ絡む動きを望みたい。
なお、イングランド戦では熊谷がボランチに配されたが、あの起用はあくまで、澤、宮間の二人を欠くスクランブル時のシミュレーションだったと解釈するべきだろう。ボランチのパートナーとのバランスのとり方や危険なスペースのケアなどの面で心許なく、なでしこの中でボランチを務めるのは、彼女にはまだ荷が重い。