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なでしこへの対策が窺えた欧州遠征。
東アジア杯で世代交代は進むのか?
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byGetty Images
posted2013/07/02 10:30
イングランド戦で、敵選手を引き付けプレーする大儀見。この遠征では、ブンデスリーガでの経験を十分に活かした活躍を見せてくれた。
W杯アジア予選がほぼ間違いなく突破できるという根拠。
「おいおい、9月からでは、来年5月の女子W杯アジア予選に間に合わないじゃないか」
という声が聞こえてきそうだが、何の根拠もない楽観論を述べているのではない。身も蓋もない言い方をしてしまえば、なでしこにとって来年のアジア予選は、試合を通してチームを熟成させつつ、本戦出場権を獲得できる大会なのである。これは、客観的な事実だ。
理由は簡単。2015年カナダ女子W杯から、アジアの出場枠は5に拡大される。その一方、現在アジア内で日本に次ぐ実力を持つ北朝鮮は、前回ドイツ大会でのドーピングによるペナルティーで、予選に出場できない。となると本戦出場は日本、オーストラリア、韓国、中国が当確、最後の1枠をベトナムとタイで争うという構図がすでにはっきりしているのだ。
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ベトナム、タイは上位4カ国との実力差が大きいから、日本が新しいチーム編成であっても、足をすくわれる相手ではない。
ベトナムを会場に8カ国で争われ、すでに発表されている大会期間から推察するに中1日、もしくは中2日の試合間隔しかないこのアジア予選。中継を担当するテレビ局は、たぶん大会間近になるとおどろおどろしく死闘ムードを煽った番組宣伝を打ってくるのだろう。だが実際のところ日本は、ほぼ本戦ストレートインに近い状態なのだ。だからこそ、今年9月の2戦と来年のアジア予選(あるいはその前に、アルガルベ杯にも出場しているかもしれない)を使って新旧勢力の融合、そして全体のベースアップを図っても、決して遅くはない。すぐに満足なパフォーマンスが得られなくても、我慢して使い続けなければ新戦力は芽吹いてこないのだから。
なでしこの武器が、もはや通じなくなっている!?
もちろんそんなことぐらい、経験豊富な佐々木監督はとうに承知だ。今年初めの段階では、東アジア杯までを発掘の場とすると明言していたのが、その何よりの証である。
だからこそ、アルガルベ杯以降の彼の変心がどうにも「らしく」なく、いろいろと無用な勘繰りをしてみたくもなるのだ……。
ずいぶんマクラが長くなった。このあたりで、今回の欧州遠征の試合そのものに焦点を当ててみよう。
欧州遠征で行われた親善試合の2試合、イングランド戦(1-1)とドイツ戦(2-4)。この2戦を通してはっきりしたのは、日本の戦い方が相当に研究されてきているということだ。
端的に表現すれば、なでしこの身上であり、他国に対するアドバンテージでもあったゾーンディフェンスと、融通無碍のポゼッションサッカーが、通用しなくなってきている。
選手が連動してパスコースを切り、奪いどころにボールを誘い込んでいくゾーンディフェンスに対しては、強いパス回しや大きなサイドチェンジ、早めに縦パスで楔を入れる、俊足選手がドリブルで積極的に突っかけて守備ラインを押し下げる、といった対抗策で、イングランドもドイツも日本のプレスをかいくぐっていた。
そして日本の攻撃時のパス回しについては、その起点であるサイドバックとボランチに激しくチャージし、いい状態でボールを持たせないのだ。