自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
三分坂、鳥居坂、芋洗坂、狸穴坂……
坂だらけの港区に東京の歴史を見た。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2010/09/18 08:00
緑の風と光を。設計者の思いが結実した原宿団地。
もうひとつのビンテージ・パターンもある。
好例は、なるしまフレンドのすぐ近く「原宿団地」。訪れた自転車ファンには「これなんだ?」と気になっていた人もいるのではないか。
原宿団地は日本住宅公団が建てた、いわば「分譲マンション」のはしりだ。竣工は1957年(昭和32年)と古い。しかし設計者は近代的なテーマのもとに、このマンションを造った。「すべての部屋に緑の風と光が行き渡る、ガラス張りのコアのある住宅を市民たちにプレゼントしたい」と。
その言葉通り、星形の建物デザイン(スターハウス)がイカしてる。このスペースに合計112戸しかないというのは、現代としては、もう贅沢としか思えない。
だが、いささか旧くなりすぎた。
何しろ築53年だ。とうに減価償却期間も過ぎ、現在は建て替え検討中。すでに一部廊下などは閉鎖され、周囲にも「建て替えます」との告知看板が出ている。
建て替え後は、ここには地上60メートル(20階程度?)のマンションビルが建つという。
ところが、これに周囲の住民が反対し、計画はもめ、今年1月にはついに建築許可の取消しを求める行政訴訟になってしまった。
マンション建て替え、むずかしいものだ。
六本木という街の流行り廃り、客の気まぐれ度。
さて、外苑西通りを南下すると、六本木通りに出る。そこを曲がってすぐに、もう一つの古びた建物がある。
「六本木天然温泉zaboo」。4年前にできたばかりの頃は、六本木にも「大江戸温泉物語」のような本格的温泉が、と持てはやされたスパ施設だったんだけど、時代の流れの中、開館わずか1年半でであえなく廃業。入浴料4000円はさすがに高かったか。内部の意外な狭さがモノを言ったか、いずれにせよ六本木の流行り廃り、客の気まぐれ度は、いかんともしがたい。
ちなみにこのzaboo、経営母体はあのユニマットだったそうだ。巨大な本社ビルもここのすぐ近くにある。