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古巣・ロッテ相手に躍動して“恩返し”。
好調阪神を牽引する西岡剛の覚悟。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNanae Suzuki

posted2013/05/27 12:50

古巣・ロッテ相手に躍動して“恩返し”。好調阪神を牽引する西岡剛の覚悟。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

3年ぶりに日本球界に戻ってきた西岡。今季、ほぼ全試合に出場し打率.314と、好調阪神を支える原動力となっている。

国内復帰の際にロッテではなく阪神を選んだ真意とは?

 怪我などの影響によりメジャー2年間で結果を出せず、日本球界復帰を決断したときもそうだった。

 獲得に名乗りを挙げたロッテとの交渉を終えた直後、「育ててもらった球団だし悩むところ。断る理由はない」と心境を語ったものの、最終的に選んだのは阪神だった。

 だからきっと、西岡の胸中には良心の呵責があったのだろう。それは、阪神の入団会見での彼の言葉が物語っている。

「アメリカに渡って非常に不甲斐ない成績で終わりました。力のなさを痛感して、また一からやるんだという気持ちにもなっていますし、そういう意味でも自分自身にプレッシャーを与えながら頑張っていきたい」

 さらに、インタビューなどではこんなことも語っていたそうだ。

「ロッテに入っていれば、球団もファンもやりやすい環境を作ってくれたと思う。でも、それに甘えてしまうと、自分の野球人生が早く終わってしまう気がした」

 それが厳しい現実を招く結果になっても、西岡はこれまで正しいと思ったことは主張してきたし、プレーで状況を打破してきた。だから阪神という人気球団で今一度、自分の力量を見定め、技術を高めることを誓ったのだ。

努力を前面に出すのを嫌う西岡だが、練習では妥協を許さない。

 今季開幕後の西岡の姿勢に触れれば、それをはっきりと認識することができる。

 自身の力を過信することなく、パフォーマンスが下がってきたと感じれば、全体練習とは別に室内練習場で打撃練習に励む。その日の体調に合わせてバットの重さも変えるなど、細部にも妥協を許さない。普段は努力を前面に出すことを嫌う西岡ではあるが、「結果が全て」とプロの厳しさを知っているからこそ、他人の目を意識せずに貫けることなのだろう。

 結果は目に見えて表れている。リードオフマンとして打率3割をキープ。上本博紀ら、昨季1番を任された選手の打率がトータル2割4分5厘だったことを考えると、彼の活躍はチームの不安要素を断ち切り、得点力を向上させたといえる。

【次ページ】 戦い慣れたマリンで活力を取り戻したリードオフマン。

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