野球善哉BACK NUMBER
島袋はついに“怪物”になったのか?
興南vs.聖光、エース対決の顛末。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/08/18 20:15
初回を無難に抑えた両エースにやがて変化が……。
1回表、先に島袋がマウンドに上がる。
すべてストレートで押す強気のピッチングで、二者連続三振を含む三者凡退で好スタートを切った。我喜屋監督が試合前に話した「1回表の精神力」を見せつけての快投劇である。
「島袋君を攻略するための対策をしてきた」と意気込んでいた聖光学院・斎藤智也監督も、「1回表の島袋君を見た時はさすがだと思った」という。
1回裏、歳内は先頭打者に右翼前安打を打たれるも、無得点に抑える。両者初回は無難に立ち上がった。
2回表に試合が動いた。
聖光学院が島袋のストレートを狙い打つ。先頭の4番・遠藤雅が左翼二塁打で出塁し、犠打で三進後、斎藤英、星の連続適時二塁打で2点。2死後、歳内にも適時打が出て計3点を奪った。
見事な先制攻撃である。星が打ったのは変化球だったが、ピンチになればなるほどストレートを多投する島袋を上手く攻めての3点先取である。
大会12日目にして初めて味わうベストゲーム。
興南も負けていない。
その裏、歳内のスプリットを狙い打ち。先頭の5番・銘苅が中前安打で出塁すると、犠打で二進後、7番・伊礼が適時三塁打。8番・島袋が犠牲フライを放ち1点差とした。なおも9番・大城が中前安打で出塁、盗塁を決めるなど、この回での同点にこそならなかったが、試合の主導権を奪い返したのだ。そして、3回裏には慶田城、真栄平、銘苅の安打で同点とした。
なんと、水準の高い試合だろう。
注目した両投手が打たれたとはいえ、大会12日目にして初めて味わうベストゲームといえた。
そして、4回。この表・裏の攻撃で両チームの明暗がくっきり分かれた。
4回表、前の回から変化球を多投し始めた島袋が聖光学院の攻撃を三者凡退で斬る。
一方、4回裏1死から聖光学院守備陣にミス。セカンド後方に上がった飛球を二塁手の山口が落としてしまう。犠打で二進を許した後、1番・国吉大陸の左翼前安打で2死・1、3塁。2番・慶田城のカウントは2-2となるが、変化球を狙い打たれていた歳内はここでストレート勝負にでる。インコースへのベストボールだった。
判定は「ボール」。そして、次の球。やや高く入ったボールは、慶田城のバットの芯で捉えられ走者一掃となった。
歳内はここで、マウンドを降りた。
島袋は、以降も変化球とストレートをミックスさせる巧みな投球術で、聖光打線に反撃の隙を与えなかった。8回裏に味方打線が爆発し、島袋は9回表から右翼手に回った。
興南が10-3で勝った。
島袋の勝利だった。