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5月5日、日本人初の9秒台出るか?
17歳・桐生祥秀とそのライバルたち。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2013/05/01 11:50
織田記念陸上の男子100m決勝で、ロンドン五輪代表だった山縣亮太(左)と並走する桐生。1995年12月15日滋賀県生まれの17歳。175cm、66Kg。
10秒01。
4月29日、織田記念陸上の男子100m予選で高校3年生の桐生祥秀(きりゅう よしひで)が出した記録は、衝撃をもって迎えられた。
スタートよく飛び出すと、中盤からぐんぐんと加速し始める。同走のロンドン五輪代表、飯塚翔太らを抑えて1位でゴールすると、表示された数字は10秒01。
続く決勝でも、追い風参考ながら10秒03の好記録で、やはりロンドン五輪代表の山縣亮太らを退け優勝した。
桐生は、中学時代では全国大会で100mの決勝に進めなかったことが物語るように、故障が多かったせいもあり決して図抜けた存在ではなかった。
頭角を現したのは高校入学後だ。小さな故障に悩まされることこそあったが、じっくり体を鍛えていくにつれ、右肩上がりに成長を遂げていった。
「軸がぶれないため、足の回転がスムーズで地面をとらえるのが上手です」と、中学時代の指導者は桐生のよさを語っていたという。その特質をいかせるようになったのである。
昨シーズンからユースの記録を次々と更新していた桐生。
開花したのは昨シーズン、高校2年のときだ。
10月の国体で10秒21、11月の大会では10秒19をマーク。ユース(18歳未満)世界記録の10秒23を2度にわたって更新し、注目の若手として迎えたのが今シーズンだった。
毎年4月下旬に開催される織田幹雄記念国際陸上競技大会(エディオンスタジアム広島)では、例年好記録が出るため、今年も「よい記録が出るのではないか」と予想されていた。桐生の記録はそれに応えた、いやそれ以上の成績を残したと言ってもよい。
10秒01というタイムの意義は大きい。
これは日本歴代2位の好記録であるとともに、ジュニア(20歳未満)の世界タイ記録である。同タイムの他の2名は、パリ世界選手権100m銀メダルのダレル・ブラウン(トリニダード・トバゴ)、ロンドン五輪4×100mリレー銀メダルのジェフリー・デンプス(アメリカ)だ。