オリンピックへの道BACK NUMBER
持久力、プレスそして「笑顔」。
女子アイスホッケー、躍進の秘訣。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNagayama REIJI
posted2013/04/22 10:31
ノルウェー・スタバンゲルで行なわれた世界選手権で副将を務めた平野由佳。日本は次回2015年世界選手権で1部に復帰する。
世界最先端の戦術を取り入れても……まだ勝てない。
また、昨年2月には、カナダからカーラ・マクラウドをコーチとして招いた。カナダ代表として、トリノ、バンクーバー五輪で金メダルを獲得した名ディフェンダーである。
マクラウドの指導は、特にディフェンス面で大きな変化をもたらした。前から積極的にプレスをかける戦術を取り入れたのである。
副将を務める平野由佳は、最終予選の後、こう語っていた。
「シーズンの途中から、フォワードからどんどんプレッシャーをかけていくシステムに変更になりました。それがうまくはまったと思います」
さらに代表合宿を月に一度に増やし、戦術の徹底を図った。
やるべき準備をやって臨んだのが、最終予選であり、世界選手権だったのだ。
だが世界と戦うには、それだけでは足りないことを代表選手たちは知っている。
プレッシャーをどう克服するか? それが解決のラストピースだった。
彼女たちには苦い思い出がある。
前回のバンクーバー五輪の最終予選のとき、最終戦の中国に勝てば出場権を得られる展開に持ち込みながら、敗れた。しかも中国は対戦成績などから相性がいいと考えていた相手だった。
何よりも辛かったのは、自らに敗れたことだった。
「ふつうにやれば勝てるとまわりも、自分たちも思っていたんですけれど、自分たちの、日本のプレーができませんでした。1点先制されただけで、もう負けたかのように沈んでしまったベンチの様子を覚えています」
足立は当時をこう振り返っている。
もてる力の発揮を妨げる緊張、プレッシャーをどう克服するか。それがチームの大きな課題として浮かんだ。
そのとき、行き着いたのが、「楽しむこと」、笑顔であり続けることだった。
「やっぱり中国戦のときは自分たちのプレーができなかった悔いがあります。だから、勝ち負けを考えるよりもまず、楽しもうね、とずっと言ってきました」
最終予選もその姿勢は実践された。初戦、ノルウェーとの試合では0-3とリードを許す苦しい状況に追い込まれた。だが、「やばいなとは思いませんでしたし緊張もなかったです」(平野)。選手たちは笑顔を失わず、逆転勝ちをおさめた。