杉山茂樹のサッカー道場BACK NUMBER
日本の南アW杯報道は妙な「バラ色」。
「ネズミ色」の現地情報も大事では?
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byAFLO
posted2010/07/21 10:30
日本のパブリックビューイングでは連夜の大盛り上がりを見せた
僕が意図的に「ネズミ色」の原稿を書く理由。
正直言って、日本の試合はデンマーク戦以外、面白味に欠けた。
パラグアイ戦のハーフタイム。僕は知り合いのドイツ人記者から、真顔でこう怒られたものだ。「日本の試合はつまらなすぎる!」と。
実際、僕も試合中に舟をこぎそうになったほどだが、面白い、つまらないは、現地にいる者にとってとても重要なことだ。報道陣のみならず、ファンも「来るなら来てみろ」と脅されているも同然のなかでスタジアムを訪れているわけなのだから。
日本に何の関係も無い純粋なサッカーファンという第三者の身に立ってみれば、試合が面白いかつまらないかは、結果以上に重要になる。W杯は日本人だけのモノではない。日本人以外にも、世界中の多くの人が目を凝らして見ている。現地にいると、そうしたことがひしひしと実感できる。
だが、バラ色を報じたがる東京サイドは、そうした目線に関心を向けようとしない。ブーイングには目もくれず、「日本は素晴らしい」とする声を、外国人からなんとか集めようとする。
なにも「ネズミ色」を積極的に伝えよ、といっているのではない。要はバランス。僕が毎度「ネズミ色」的な原稿を書く理由でもある。「バラ色」の世界が変に眩しい日本に戻ってみると、なおさらそう感じるのである。