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W杯の挫折が岡崎慎司を進化させる!
Jリーグに帰還して「一から頑張る」。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2010/07/23 10:30
次のブラジルW杯でも岡崎はまだ28歳だ。本田圭佑、長友佑都ら同い年の選手達とリベンジをするにはちょうどいい年齢ではないだろうか
「圭佑がトップに入る」
岡崎慎司が岡田監督からその言葉を聞いたのは、6月10日のジンバブエ戦の時だった。W杯の初戦まで、あと4日あまり。それは、岡崎がカメルーン戦のスタメンを外れるのと、ほぼ同意語だった。
「う~ん、圭佑にポジションを取られたのは悔しいし、いろいろ思うところはあるけど、チームで戦っているんで……。まぁ圭佑に負けたつもりはないし、自分だけのせいじゃないし、もっと勝負したい気持ちはありますけど……。今は途中から出て、爆発させてやろうって思いますけどね」
岡崎は、悔しさを押し殺してそう言った。
W杯直前になって身に染みた世界レベルのプレッシャー。
それまで、岡崎は絶対的な日本代表のエースだった。2009シーズンは、16試合に出場し、15ゴールを挙げた。今シーズンもチームは岡崎の1トップをベースに戦い続けた。ところがW杯直前の韓国戦、イングランド戦、コートジボワール戦と強豪との試合が続く中、岡崎は、まったく輝きを発することができなかった。裏への動き出しの速さが岡崎の真骨頂だが、イングランド戦やコートジボワール戦では、DFに挟まれ、容易にボールを奪われた。ほとんどボールに触れられず、芝をなめさせられた。
「アジアの試合でできたことが、ほとんどできなかった。自分としては、ボックスの内じゃなく、もっと外側にボールを出して欲しかったけど、中盤も厳しいプレッシャーにさらされて、トラップした瞬間に僕を見てくれる余裕があまりなかった。パスも今まで通っていたのが通らなかったり、フリーで持てたところが持てなくなったり……。アジアと異なると言えばそれまでだけど、それが世界のプレッシャーなんだって思った。これを克服するには、個人レベルを上げないといけない。でも、もうW杯は始まってしまう。だから裏に走ったり身体をぶつけたり、できることをやっていくしかないと思いました」
その日以降、練習を終え引き上げていく表情は、どこか淀んでいた。明るい性格でチームのイジられ役として雰囲気作りに一役買ってきたが、長年守り続けてきたレギュラーの地位を本番直前に奪われたのは、やはり相当のショックだったのだ。