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中村俊輔好調の陰に中町公祐あり。
マリノス快進撃を支える“サッカー脳”。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/04/12 10:30
中町は1985年9月1日生まれ、174cm、74kg。Jリーグは5節終了時点で全試合にフル出場している。
慶応大サッカー部で大きく変わった責任感。
直接話して伝わってきたのは、中町の非常にテンポのいい受け答えに裏打ちされた頭の回転の速さと、彼自身の頭の中にあるはっきりとしたサッカー観だった。
群馬県の高崎高校を卒業後の2004年、中町は湘南ベルマーレに加入した。しかし、プロ4年目の2007シーズン終了後に構想外となると、翌年からはかねてから籍を置いていた慶応大サッカー部に入部。サッカーに対する意識は、この時に大きく変わったという。
「(自分のレベルは)上がっているんじゃないかなと思うし、そう信じたいという気持ちもあります。ただ、自分の変化としてパッと思い当たるのは、プレーのことよりも責任感なんですよね。いや、自分では責任感を持ってずっとやってきたつもりなんですけど、それを90分間、ピッチで体現することができていなかった。その意識が、大学に行って大きく変わったと思うんです。自分で何とかしなきゃいけない、結果を残さないとその先はないという状況でしたから」
責任感は、国内有数のビッグクラブである横浜FMに来てさらに強まった。重圧は想像以上。“ある程度”のプレーでは誰も許してくれない環境では、もちろん全力を表現し続けなければポジションを確保することもできない。サポーターの存在も肌で感じる伝統も、中町に強い責任感を抱かせる力になっている。それらすべてが成長を促している。
「サッカーは一人じゃできないなって感じますよ」
「“サッカー脳”って言うんですかね、それがちょうど、頭の中で少しずつ整理されてきた年齢で、しかも体が最も動く時期、このタイミングでマリノスに来られたことが大きいと思うんですよ。いろんな経験をして自分の意見を持ちつつ、経験豊富な選手が周りにいる中で吸収して成長することもできる。いいタイミングだったと思いますね」
責任感の重みに伴って、彼自身のプレーレベルが向上していることも間違いない。それについての中町の見解にも、やはりチームそのものの好調の要因があるように感じた。
「僕は俊さんみたいに一人で何かできる選手じゃない。周りを活かすことで初めて自分が生きるタイプで、あくまで相互関係があってこその選手というか。だから、周りとの連係の良さが、今の自分を非常に良く見せてくれているというところはあると思うんですよね。チームの調子が上がればなおさら、サッカーは一人じゃできないなって感じますよ」
充実感、かなりあるんじゃないですか? そう問いかけると、中町は「ありますね」と即答した。「勝利の積み重ねがそうさせている」と冷静な言葉を発した上で、「今はあまり負ける気がしない」「引き分ける感じすらしない」とも。