日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
スペイン優勝と長谷部の言葉の意味。
Jの革命なくして、代表に明日なし!!
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKYODO
posted2010/07/16 12:20
パラグアイ戦の後、テレビのインタビューで日本のサッカーファンに送った長谷部誠のひと言がちょっとした反響を呼んだ。
「みなさんの声援が僕たちの力になりました。本当に感謝しています。ほとんどの選手がJリーグでプレーしているので、そちらにも足を運んでください」
ドイツのヴォルフスブルクに所属する長谷部が、現在はプレーしていないJリーグへの応援をわざわざ呼びかけるとは、思ってもみなかった。
今回の岡田ジャパンは前回のドイツW杯メンバーと比べると欧州組が少なく、23人のうち長谷部、本田圭佑、松井大輔、森本貴幸の4人にとどまった。一時期より欧州でプレーする選手が減り、中村俊輔と稲本潤一が今年からJに復帰したことも理由にある。
もちろん欧州組の力が岡田ジャパンの躍進に大きく関わったことは間違いないのだが、数的にはJリーグの選手を中心としたメンバーでベスト16という結果を得た意義は非常に大きい。今大会の成果として言えるのは遠藤保仁や阿部勇樹らJリーグ一筋のプレイヤーたちが世界相手に十分戦えたことだった。
スペインはバルセロナ、ドイツはバイエルンの形を踏襲。
代表と国内リーグの関係は密接であるべきだ。
そして国内リーグのレベルが上がれば上がるほど、その国の代表は強さを増す。
今大会を見てみれば、それは一目瞭然だ。優勝を飾ったのはバルセロナのメンバーが中心となったスペインだった。シャビ、イニエスタが攻撃の舵を取り、ブスケツがバランスを見る。そしてセンターバックのプジョルとピケがビルドアップの起点になる。まさにバルサ流をそのまま持ち込んだスタイルであった。
サッカー解説者の風間八宏はこう言う。
「代表チームで守備を構築するのはそこまで時間はかからない。だけど創造性の共有が重要になる攻撃の形をつくるには、すごく時間がかかる」
ゆえにスペインは攻撃をバルサで補った。バルサの選手がいて、バルサを体感するレアル・マドリーやバレンシア、ビジャレアルなどほぼ国内リーグの選手で固められていることで攻撃の共有はスムーズにいったのだった。
これは今大会、攻撃美を披露したドイツにも近いことが言える。
チームはバイエルン・ミュンヘンのメンバーをそろえたうえでブレーメンのエジル、ケルンのポドルスキなど、国内リーグの選手たちでほぼ占められていた。攻撃的なサッカーを志向する今のブンデスリーガのスタイルが代表チームにも反映されたのだ。
国内リーグのベースがあることで「攻撃の形をつくる時間」を短縮できたのだと言えなくもない。