南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
“ハンドボール”か“堅守速攻”か?
南アW杯が示した2014年への新潮流。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/14 11:50
「守備重視」の国が「時代遅れ」の強豪国を苦しめた。
今大会を「守備の大会」と呼ぶ意見は、日本のサッカーメディアで多い。これも確かにそうだろう。ウルグアイ、アメリカ、日本、スロバキアといった守備重視の国が善戦し、決勝トーナメントに進出した。
そのあおりを受けたのが、サイドからのクロスやロングボールといった「時代遅れ」の攻撃しかできない国だ。守備ブロックを崩す手を見つけられず、フランスとイタリアはグループリーグで姿を消し、イングランドはC組で苦しんだ。
堅い守備を攻めあぐねる強豪国――。
そんな図式が、「守備の大会」という印象を強めたのだろう。
しかし、「盾」を貫く「矛」を持っている国にとっては、逆にチャンスになった。
たとえ時代遅れの攻撃しかできないとはいえ、個の力を考えればフランスやイタリアは、「ハンドボール・フットボール」の国にとっても厄介な相手である。だが、守備的なチームのおかげで、彼らは早い段階で姿を消した。スペインは準々決勝でパラグアイと、オランダは準決勝でウルグアイという格下と当たれたのも、そういう背景があったからだ。
南米勢は、“ハンドボール”の威力に気づいていない。
ここでブラジルとアルゼンチンという南米勢は、どこに属するのか? と疑問に持つ人もいるだろう。実は筆者も分類しかねている。どちらの国も「ハンドボール・フットボール」をやるだけの個人技があり、ときおりそういうパスワークも見せた。だが、どうも組織として意図的にやっているようには見えないのである。欧州勢のように、その効果と威力に気がついていないのではないだろうか。だから、かたやオランダの、かたやドイツの壁を破れなかった。
ブラジルで開催されるW杯まであと4年。
多くの代表チームにとって、(1)のスタイルに挑戦するのか、(3)のサッカーを突き詰めるのか、頭を悩ませる4年間になりそうだ。