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済美・安楽智大でセンバツが沸騰!
最速152キロの2年生右腕を徹底検証。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byKyodo News

posted2013/04/02 06:00

済美・安楽智大でセンバツが沸騰!最速152キロの2年生右腕を徹底検証。<Number Web> photograph by Kyodo News

準々決勝の県岐阜商戦で、9回に151キロを記録した安楽。今大会3試合目の登板で投球数は529球に上ったが、「(この大会を)1人で投げ抜きたい」と強気なコメントをしている。

安楽の出現で、“二刀流”大谷翔平の人生も変わる!?

 この安楽の出現によって日本ハムの二刀流、大谷翔平の未来も変ってくるのではないかと思った。

 投打で圧倒的な素質の高さを見せつける大谷だが、大谷は投手をやりたくて仕方がなく、球団は野手として育てたくて仕方ない。その折衷案として登場したのが二刀流である。

 この折衷案にも近々限界がくる。投手か野手か、どちらの道を選ぶのか話し合いがもたれたときに安楽の存在が華々しく取り上げられていれば、わずか2学年下に自分と同等の評価をされる投手がいるのかと気にすることになるだろう。同期には藤浪晋太郎(阪神)もいて、日本は好投手が出やすい土壌だとわかる。

 反面“超高校級”と言われるような強打者はなかなか出てこない。

 プロ1年目から活躍が期待されるような選手は過去27年間では、中田翔(日本ハム)、松井秀喜(元ヤンキースなど)、清原和博(元西武など)くらいしか出現していない。投手大谷は「3年に3人」の逸材だが、打者大谷は「27年に4人」くらいの逸材と言っていい。

 こういうことがわかっているから日本ハムフロント陣は大谷に野手専任の道を歩ませたいのだろうが、メジャー挑戦を断念させて日本球界入りに導いていることもあり強くは言えない。あとは大谷の決意待ちだが、その目を「野手の道」に向けさせる衝撃力の強さが安楽にはある。

「大谷、藤浪クラスに育ちますか?」「その可能性はあります」

 野手・安楽の道はないのかと言われそうだが、ないと思う。

 高いグリップ位置を大きく引きながら肩のあたりまで下げる――これほど大きいグリップの上げ・下げをして安定して打てる打者はいない。むしろ、そういう打ち方でも2戦続けて殊勲打を放っているところに安楽の凄さがあると言っていい。大谷が挑んでいる二刀流の道は、安楽に限っては考えなくてもよさそうだ。

 安楽が初めて登板した広陵戦後、甲子園球場で顔を合わせたスカウトの方々に「凄かったですね」と振ると、例外なく「凄かったですね」と笑顔で返答があり、あるスカウトなどは「破格ですね」と顔を上気させて言った。「まだ前の席で見ていない」と言ったくだんのスカウトは前の席で見たといい、「大谷、藤浪クラスに育ちますか?」と聞くと、「その可能性はあります」と断言した。

 準々決勝までの安楽の凄さを大会終了前にレポートすることになったが、センバツの戦いはこれで終わったわけではない。準決勝の“四国対決”高知戦を勝ち抜けば済美は'04年夏以来の決勝進出で、優勝すれば'04年春以来、9年ぶりの快挙となる。

 大阪桐蔭の敗退で寂しくなりかけたセンバツを賑々しい晴れ舞台に整え直した安楽。夏の大会まで追いかけてみたいと強く思わされた春だった。

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