MLB東奔西走BACK NUMBER
ドジャースの幹部に直接聞いた――。
メジャー流の育成体制を徹底検証。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph bySports Illustrated/Getty Images
posted2013/03/17 08:01
2011年、2Aのハリスバーグ・セネタースにいた頃、19歳のブライス・ハーパー。自分の用具とカバンに囲まれて、ダグアウトで試合を待つ。
“白帯か? それとも黒帯か?”
柔道や空手を習ったことがない人でも、白帯から黒帯に移行する際、きちんとそのレベルにあった昇級を重ねながら段階を踏んでいくシステムは理解していることだろう。もちろんそれは野球の世界でも同じことが言えるはずだ。
そんなことを改めて感じさせられる出来事がメジャーのキャンプ取材中に起こった。
昨年の大谷翔平選手の去就問題でクローズアップされたマイナーリーグという巨大組織。だが結局は“厳しい環境”とか“メジャーに昇格するまでの行程が長い”などのイメージばかりが先行し、日本国内でその実態を正確に検証されることはほとんどなかった。
“黒帯か白帯”という二択以外の選択肢はないのか?
そんな中、ドジャースのスカウト部門と育成部門のトップ2人からマイナーリーグについて、また彼らの育成システムについてその実情を聞かせてもらった。
ここで冒頭の言葉に繋がっていくわけだが、アマチュア選手のスカウト活動を統括するローガン・ホワイト氏は、武道を例示しながら以下のようにマイナーリーグの実情について説明してくれた。
「日本ではマイナーからメジャーに昇格するまでは長いプロセスを通らなければならないと考えられているようだが、逆に言うとその過程は空手などの昇級に似ていると思う。きちんと基礎を身につけながら、自分にあったレベルへと徐々に成長していき、最終的にメジャーで通用する選手たちを育てていくというスマートなやり方だと思う。日本のシステムの“黒帯か白帯のいずれか”という方が選手にとってみれば大変なのではないか」
マイナーリーグはルーキーリーグから3Aまで6つの段階に分かれている(さらにドミニカなどでもサマーリーグが行なわれている)。選手たちのレベルを見極めながら、適したリーグで思う存分プレーできる環境を用意する、というのがメジャーの育成法というわけだ。
その過程を経てメジャーまで到達するのは、計り知れなく遠いプロセスのように感じるかもしれないが、それこそ選手の成長次第なのである。
メジャー初昇格まで何年もかかる選手もいれば、あっという間にメジャーまで辿り着いてしまう選手も少なくない。