南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
W杯で南アはどう変わったのか?
サッカーと地元経済の切実な関係。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2010/06/29 11:55
南ア代表が負けて、路上の少年たちの商売も終わった。
そもそも、経済学者によると、大規模なスポーツイベントは闇の商売と相性が良い。
「無届けで商売をする“インフォーマル・セクター”は世界不況で非常に大きなダメージを負った。だから、おそらくワールドカップの開催を大いに喜んでいるだろう。彼らのビジネスが以前より繁盛しているのは確かだ」
南アフリカの経済学者マイク・シュスラーは地元の新聞紙上でこう語っている。
しかし、フィレモンと友人の春は長くは続かなかった。南アフリカがグループステージで姿を消してしまったせいで。
「バファナ・バファナが負けた時点で終わったね。国旗なんて、いまは誰も欲しがらない。他の国の旗? もともとそんなに売れてたわけじゃないから」
なるほど停車中の車にイタリアの旗を差し出したが、全く相手にしてもらえない。
W杯成功の裏で、政府への期待感は日に日に薄れている。
では、今後はどうするつもりなのか。ズマ大統領がいうように、仕事は見つけやすくなると思う?
「さあね、どうだろう。いままでと変わらないんじゃないか。俺は、次はジュースでも売るよ」
顔には何も期待していないといった表情。
その後もホテルを出る度、彼の姿を目にしたが、日に日に覇気がなくなっているのは遠目にもわかった。
物売り仲間の数もどんどん減っていった。
ズマ大統領の確信が現実になることを祈る。