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取り戻したファイティングポーズ!
苦悩の指揮官、岡田武史の「転機」。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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posted2010/06/27 15:30

取り戻したファイティングポーズ!苦悩の指揮官、岡田武史の「転機」。<Number Web> photograph by Getty Images

落ちるところまで落ちた岡田監督が気づいたこととは。

 実はイングランド戦の1週間前に行なわれた韓国戦に0-2で敗れた後、指揮官は己を責めたという。

「選手を活き活きとプレーさせてやれなかった。それが悔しい」

 知人にそう言って悩める思いを吐露している。

 壮行試合となった韓国戦の後、サポーターに向けてのあいさつの場にも立たなかった。チームを率いる身としてサポーターに直接メッセージを発しなかったことは、あまりにも残念だった。しかしその一方で苦しむ思いも伝わってきた。はらわたが煮えくり返るぐらいの自分への怒りだったろう。岡田は落ちるところまで落ちたことで、自分自身がファイティングポーズを取れていないことに気づかされたのではないだろうか。

 イングランド戦から2週間――。指揮官はファイティングポーズを取り戻した。

 カメルーン戦での岡田はずっと立ちっぱなしで、ことあるごとに大声で指示を出していた。オランダ戦では前半4分におもむろにノートを取り出してメモにペンを走らせてもいた。負けたあとはしばし両手で口を押さえて無念そうな素振りを見せるなど、アクションが多くなっていく。指笛も鳴った。オランダ相手に0-1なら傷口を広げない手もあるだろうが、後半の彼は中村俊輔、玉田圭司、岡崎慎司と次々に攻撃の手を打ってきた。

6月29日パラグアイ戦――「岡田のメガネを壊せ!」

 指揮官のファイティングポーズが乗りうつったかのように、デンマーク戦での岡田ジャパンは闘う姿勢を前面に押し出して戦うことができた。だが、監督と選手の気持ちが完全にひとつになったとはまだまだ思えない。

 '03年にマリノスがファーストステージを制した試合。先制ゴールを決めた中澤佑二は岡田のもとに寄って抱きつき、そこに歓喜の輪が広がった。そのとき岡田は中澤の体を受け止めきれずにメガネを落としてしまい、踏みつけられている。壊れたメガネを手に持って目にあてながら岡田が采配を続けた様子は少々滑稽ではあったが、チームの一体感がストレートに伝わってきた。

 さて、パラグアイ戦である。

 しっかりとファイティングポーズを取らなければ、ノックアウトステージでは生き残れない。もっともっと闘う姿勢をチーム一体で出していかなければなるまい。

 岡田のメガネを壊せ――。

 6月29日、プレトリアのロフタス・バースフェルド。

 次々に指揮官のもとに飛び込み、メガネが壊れてしまうほどの歓喜の抱擁があることを切に願う。

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