日本代表、2010年への旅BACK NUMBER

取り戻したファイティングポーズ!
苦悩の指揮官、岡田武史の「転機」。 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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posted2010/06/27 15:30

取り戻したファイティングポーズ!苦悩の指揮官、岡田武史の「転機」。<Number Web> photograph by Getty Images

2010年、日本代表がなかなか結果を出せなかった理由。

「いいか、腰の引いた試合にだけはするな。守りに入るな、点を取りにいけ!」

 結局、第2戦は得点を奪えず0-1というスコアで終わったものの、2戦合計で1-1という状況に持ち込んでPK戦で勝利を収める。攻守にわたって積極的な姿勢を崩すことなく戦った結果、この勝利につながったのではないだろうか。相手の長所を打ち消す守備的な戦術であっても、積極的かつ攻撃的なマリノスのチームマインドが最大限に発揮された試合だったと言える。

 リーグ2連覇を果たした2003、2004年シーズンの岡田は、選手たちの闘う姿勢にこだわっていた。

「最後までファイティングポーズを取れているかどうか」と――。

 ルステンブルクでの岡田ジャパンは間違いなくロスタイムを含めた最後の1秒、コンマ1秒までファイティングポーズを取っていた。それゆえ、デンマークを仕留めることができた。

 W杯イヤーの2010年に入って岡田ジャパンがなかなか結果を出せなかったのはなぜか。

 選手よりも指揮官自身にファイティングポーズが感じられなかった。そのことが、要因のひとつだと私は思う。

変化のきざしを見た5月30日のイングランド戦。

 ベンチに座ったままで、感情を押し殺すように仏頂面で試合を眺めているような岡田武史など、本来の姿ではなかった。私が知るマリノス時代の岡田武史は冷静と情熱の両面を試合中、交互に表に出していくアクションの多い監督だった。

 指笛を鳴らして指示を与え、腕組みをしながら声を張り上げる。その一方でノートにペンを走らせてメモを取り、考え込むような仕草を見せる。それが今年に入ってベンチから動かない、感情を表に出さないのである。あのオシムだって、腹を立ててペットボトルの水を蹴り上げていた。アクションの多かった指揮官が静かになってしまえば、選手もファイティングポーズなど取れるわけがない。

 アジア最終予選のウズベキスタン戦、長谷部誠の退場に怒って審判にクレームをつけるような態度を示して岡田は退席処分になった。あの熱さが岡田に戻らないまま合宿地のスイス・ザースフェーへ向かったのだから、期待が膨らまないのは当然である。

 岡田に変化のきざしを見たのは5月30日のイングランド戦。ピッチ脇でカペッロ監督と言い合いになり、不機嫌そのものの顔つきでベンチに戻ったときの岡田には何やら迫力めいたものがあった。

【次ページ】 落ちるところまで落ちた岡田監督が気づいたこととは。

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