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熱狂に燃えて散った開催国南アフリカ。
「豊かな国」のサッカーはどうなる? 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byGetty Images

posted2010/06/26 14:00

熱狂に燃えて散った開催国南アフリカ。「豊かな国」のサッカーはどうなる?<Number Web> photograph by Getty Images

「国内に夢がある」南アでは選手は外に出ていかない。

 南アフリカが敗退したのは、ひと言でいえば弱かったからだ。

 アフリカで最も豊かなこの国には、アフリカで最も豊かな国内リーグが存在する。そのため、南アフリカの天才少年は、ナイジェリアやカメルーン、ガーナの少年のように、ヨーロッパに出て行こうとはしない。カイザー・チーフスやオーランド・パイレーツで大活躍すれば、一生が保証されるからだ。

 子どもたちの憧れは、モディセやチャバララ。国内に夢がある。

 外に出て行かない傾向は、数字にもはっきりと表われている。

 アフリカ勢6カ国の中で、南アフリカは国内組が突出して多い。

 ガーナ3人、コートジボワール1人、カメルーン1人、ナイジェリア0人、アルジェリア3人に比べて、バファナ・バファナには実に16人もの国内組の選手がいる。

懇意のタクシー運転手が語った南アサッカーの問題点。

 これはバファナ・バファナが、アフリカ文化にどっぷり浸かっていることを物語る。ヨーロッパのビジネス的なサッカーではなく、股抜きやヒールパスといった「トリック」を多用する、つまりは遊びのサッカーだ。こうしたスタイルは、旧黒人居留区のストリートサッカーに由来する。

「そう、だからバファナ・バファナの選手たちは、すぐに魅せるプレーに走ってしまう。勝敗のことを忘れて、敵を転ばすことに快感を見出してしまうんだ」

 懇意にしているタクシー運転手のブルースが、苦笑交じりに語った。しかし彼は、今大会のバファナ・バファナは「非常に中途半端だった」と指摘する。

 ブラジル人のパレイラ監督は、バファナ・バファナに規律や守りの文化を持ち込もうとした。決定的に欠けているものを補強しようとしたという意味で、決して間違っていない。

 だが、アフリカの楽天的なサッカーに馴染んだ選手たちは、ヨーロッパや南米の勝負に徹する文化を自分のものにできなかった。

【次ページ】 「代表チームは人々の文化を代表したプレーをするべきだ」

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