南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
パラグアイは日本と同じ「堅守速攻」。
メッシも封じた“包む”DFの怖さとは。
text by
西部謙司Kenji Nishibe
photograph byGetty Images
posted2010/06/28 06:00
決勝ラウンドに進出した日本の次の相手は、グループFを首位通過したパラグアイである。
1次リーグで戦ったカメルーン、オランダ、デンマークについては嫌というほど聞かされてきた。だが、急にパラグアイと言われても情報がない。パラグアイとは、どのような国で、どんなサッカーをするのだろうか?
そもそもパラグアイという国は日本に決して馴染み深いとはいえない。だが、かつては広山望や武田修宏といった日本代表経験者がパラグアイリーグでプレーしていたり、チラベルトという名物GKの国と聞けば、親近感が湧いてくる方もいるのではないだろうか。
僕自身はといえば、パラグアイ代表チームについては何度か見ている。最も古い記憶はフリオ・セサル・ロメロというアタッカーだ。'79年に日本で開催されたワールドユース大会(現・U-20ワールドカップ)にパラグアイの主将としてプレーしていた。
この大会のスターはアルゼンチンを優勝に導いたディエゴ・マラドーナ(現アルゼンチン代表監督)だが、マラドーナに次ぐ輝きを放っていたのがロメロだった。細身でエレガントな攻撃的MFで、後にニューヨーク・コスモスのメンバーとしても来日している。
'98年フランスW杯では開催国フランスを追い詰めた。
パラグアイは南米サッカーの古豪で、実はW杯にも第1回大会から参加している。1929年のコパ・アメリカに準優勝していたので、翌年の第1回W杯でも優勝候補の1つに挙がったが、何と、“サッカー不毛の国”アメリカに負ける番狂わせを喫した。
その後は'50、'58年大会に参加、'86年に初めてグループリーグを突破し、'98年フランスW杯でもベスト16に進出した。フランス大会では、決勝トーナメント1回戦で開催国フランスと激突、ジダンを欠く相手にゴールデンゴール方式の延長戦まで粘り、あわやというところまで追いつめている。もう、このときには「堅守速攻」のイメージが定着していた。中心選手は、日本でもお馴染の、と言っていいだろうGKのチラベルト。ゴールキーパーでありながらFKやPKも蹴る変わり種だったが、生まれながらのリーダーでカリスマ性は抜群だった。パラグアイのサッカー選手といえば、まず彼を思い浮かべる人も多いに違いない。
さて、今大会。パラグアイの特徴はやはり堅守だ。
イタリア、スロバキア、ニュージーランドと戦って失点はわずかイタリアに与えた1点のみ。イタリア戦に1-1、ニュージーランドに0-0で引き分け、スロバキアを2-0で破って決勝トーナメントに進出してきている。