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熱狂に燃えて散った開催国南アフリカ。
「豊かな国」のサッカーはどうなる? 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byGetty Images

posted2010/06/26 14:00

熱狂に燃えて散った開催国南アフリカ。「豊かな国」のサッカーはどうなる?<Number Web> photograph by Getty Images

 史上初のアフリカでのワールドカップでは、予想だにしないことが立て続けに起こっている。

 開催国南アフリカと前回王者イタリアが、グループステージで敗退した。躍進が予想されたアフリカ勢は、6月25日を終えた時点で、出場6カ国合計で3勝しかあげていない。そして日本の快進撃……。僕の予想は裏切られ続けている。我が身の不明を恥じるばかりだ。

 それにしても、南アフリカがグループステージで消えるとは思わなかった。弱いということは、1年前のコンフェデを見たので知っていた。しかし、それにしても……。

 僕は南アフリカとメキシコの開幕戦を、反アパルトヘイト運動の拠点となった旧黒人居留区「ソウェト」で見た。

 このときの熱狂ぶりが、いまでも目と耳にこびりついている。

 真っ黄色のユニフォームに身を包んだ大群衆と、殺人的なブブゼラ音の大洪水――。南アフリカの大地が、大きくうねっているようだった。

 この爆発的な熱狂は、2002年日韓W杯時の韓国を想起させた。

「ああ、FIFAはこういうストーリーを描いたのか」

 国中が狂ってしまえば、どんなに偏った判定も正義になる。トッティの退場、スペインのゴールの取り消し……。

「あれだけ狂ってたら仕方ないよ」

 そう思わせてしまったら、勝ったも同然である。

 韓国にあったものが、南アフリカにもあった。だから、バファナ・バファナ(南ア代表チームの愛称)は勝つ。少なくとも、グループステージは通過するだろう。そう確信したのだ。

 メキシコに引き分け、ウルグアイに0対3と完敗したことで彼らは崖っぷちに立たされる。この時点で、僕はもうダメだと思った。しかしその後、3戦目の敵フランスに内紛が勃発する。

 僕は、「ああ、FIFAはこういうストーリーを描いたのか」と思った。どんでん返しが始まる、と。

 だが、バファナ・バファナは勝ち残れなかった。フランスを2対1で破ったが、得失点差でメキシコを上回ることができなかった。

【次ページ】 「国内に夢がある」南アでは選手は外に出ていかない。

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