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東京ではないようでやはり東京。
青梅に福生、下り坂ポタリング。 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2012/12/31 08:00

東京ではないようでやはり東京。青梅に福生、下り坂ポタリング。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

青梅のレトロなバス停の前で、今回の輪行のお供となった愛車BD-1をパチリ。2013年も、この調子で全国を自転車で走り回る予定ですので、ヨロシク!

あまりにハイクオリティな“普通のラーメン”!?

 さて、青梅に長居しすぎた。おまけにまだあまり走ってない。「昭和の町」を背にして、まだ何かありそうな気配を感じつつ奥多摩街道を進む。と、すぐに東青梅駅前にでる。で、東青梅駅(青梅駅の隣)前のラーメン屋に入ったってわけ。

 ラーメン福助。黄色いビニール製の軒が、ふーむ、これまた昭和。屋号が若干剥がれ、強い風にビニールがはためいている。

 しいていえば伊丹十三監督の映画「タンポポ」に出てくるような、典型的な“古いラーメン屋”。で、私は山崎努をきどって(うそ)おもむろに店内に入った。もうお昼時を過ぎてるということもあって、店内はガラガラ。店の調度は安っぽくて薄汚い(すまぬ)。デコラ張りのベニヤ製L字カウンターに、金属脚の丸椅子。私は入った瞬間に後悔した。ただ、香りだけはいい。伝統的な「普通のラーメン店」の、良質な香りがする。

 頼んだのは味噌ラーメン。で、私は驚いた。

 うまいのだ。ものすごくうまい。

 あくまで普通。それなのにその普通の味噌ラーメンぶりが非凡。香りや旨味のいちいちが、麺を噛むたびに鼻の奥に立ち上がってくる。

 スープは若干赤い。赤くて肉の旨味が強い。見るとカウンターの中ではオヤジさんが大きな豚のカタマリを包丁でさばき、チャーシューを作っている。

「うまい、ですね、これ」私は思わず言う。

「そうですか? ありがとうございます」

 丁寧すぎるほど丁寧なオヤジさんが、照れた顔をほころばす。今日みたいな寒くて風の強い日は味噌ラーメンがいいですね、なんていう。

 こういう発見は、間違いなく人生のシアワセのひとつだろう。別段、有名店というわけじゃなく、元々知ってたわけでもなく、単なる偶然でたまたま入っただけ。そのラーメンがかくも旨い。

 じつは、家に帰った後、ネットで検索してみた。思った通り、有名店というわけじゃない。だが、評する人は誰もがベタ褒めしていた。普通なんだが、その普通さがあまりにハイクオリティ、と。誰もが同じ感想を持っている。私もそうだった。

 半チャンラーメン(醤油)が、定番なのだそうだ。これはまた来て食べてみなくては。

 東青梅は、この福助だけで来る価値があるな。いや、本気の話。

あまりにも恐ろしい! 青梅最大の都市伝説とは?

 東青梅を出て、奥多摩街道をまたまたちょっと行くと「青梅マラソンスタート地点」というかなり大きな標識が出てくる。

 現在は「東京マラソン」にお株を奪われてしまって、ちょっと目立たなくなってしまったんだけど、この青梅マラソンこそが、かつては東京随一の市民マラソン大会だった。堂々のメジャーだったのだ。

 で、この青梅マラソンに関しては、ちょっとした都市伝説がありましてね。

 このイベント、1967年の初回開催時は名前を「青梅国際マラソン」と言った。当時は男女を別スタートとしていたんで、当然、女子の方は「青梅国際女子マラソン」だったという。

 普通に読むと、おーめこくさいじょしまらそん。

 ふむ、これは……アレだ。何らかの臭気を漂わす女性しか参加できないのか、と。色々支障がありかねない。このままではNHKのアナウンサーが大会名をクチにできない。

 ということで、青梅マラソンに改名したのだという。「オマーン国際女子マラソン」「阿蘇国際女子マラソン」はフィクションだが、青梅は本当。なにしろ当時は、まだ関西弁が首都圏に浸透してなかったから……、と。

 なーんてね。

 まことしやかに語られる、この「青梅国際」伝説、じつはすべて真っ赤なウソであります。青梅マラソン、初回開催が1967年であるということだけは事実だが、最初から「青梅マラソン」だった。国際などついたことは一度もないそうな。

 ふーむ、そうか。

 そうだろうな。しかし……、つまらん。

 なら、どうだ。別の可能性は考えられないか。

 そのとき、突如として私は天啓を得た。で、その天啓の命ずるままに、この地で「青梅高校」を探すことにした。

【次ページ】 青梅高校の略称を思いながら、その校舎を探すと……。

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