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野村、十亀、伊藤、藤岡……。
'11年ドラフト1位選手の○と×。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2012/12/31 08:02

野村、十亀、伊藤、藤岡……。'11年ドラフト1位選手の○と×。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

明大時代、菅野(東海大)、藤岡(東洋大)と共に「大学ビッグ3」と呼ばれた野村。菅野がプロ入りを1年見送り、藤岡がプレッシャーに苦しめられる中、見事新人王に輝いた。

ルーキーたちの結果を分けた意識の差。

 今年に限って言えば、結果を残せたか否かの境界線を明確に表すことができる。

 極端に言ってしまえばそれは、意識の有無だ。

「○」だった選手は、目の前の1試合に対し、いい意味で無欲に臨むことができていた。

 ルーキーでは46年ぶりの防御率1点台をマークし、圧倒的な大差をつけセ・リーグの新人王となった野村はその代表だ。

 明大時代から、「精密機械」と呼ばれるほど制球力は高かったが、それ以上に、打者を速球でねじ伏せる力強さも兼ね備えていた。

 そしてプロでも、「コースを間違えない」ことだけを意識し、速球でどんどん押す気持ちの良い投球を披露。勝ち星を積み重ねていった。8月以降は、体力的な問題から勝ち星に恵まれず2ケタ勝利は逃したが、それでも立派な数字を残したといえるだろう。

社会人即戦力となった西武・十亀の投球術。

 西武の十亀も、無欲なマウンドを重ねていったことで結果を得た一人だ。

 その十亀は、春季キャンプでこんなことを言っていた。

「大学まではストレートでゴリ押しすることしかできませんでしたけど、社会人になってから、変化球でかわすことによってストレートも生きてくると分かったので、内角にも強気に攻められるようになりました」

 社会人時代に学んだことがプロでも通用すると信じ、己の投球を続ける。今季、中継ぎとしてチームの信頼を勝ち取り、終盤には先発を任せられるなど、十亀は投手陣を支える存在として機能した。

「楽しんでやる」ことが好成績につながったソフトバンク・武田。

 1年目にして大ブレークを果たしたソフトバンクの武田は、高卒選手ならではの信条で結果を出した一人だった。

「バックを信じて野球をする。『楽しんでやろう』をモットーにしているので、それを続けていることが良かったと思います」

 7月に一軍昇格を果たすと、わずか3カ月余りで8勝と、武田は一気にローテーション投手にまで成長を遂げた。

「プロでは楽しむことなんてできない」と語る人間は多い。だが、右も左も分からない1年目、さらに言えば経験の少ない高卒選手だからこそ、むしろ、武田のように楽しんで野球をすることが大事なのかもしれない。

 武田ほどではないにせよ、同じ高卒新人の中日・高橋周も、開幕一軍、2本塁打などトータルとして数字以上のインパクトを残したことを含めれば、「○」に値する働きだった。

【次ページ】 「新人王の大本命」、ロッテ・藤岡が振り返る1年目。

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