野球クロスロードBACK NUMBER
野村、十亀、伊藤、藤岡……。
'11年ドラフト1位選手の○と×。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/12/31 08:02
明大時代、菅野(東海大)、藤岡(東洋大)と共に「大学ビッグ3」と呼ばれた野村。菅野がプロ入りを1年見送り、藤岡がプレッシャーに苦しめられる中、見事新人王に輝いた。
「新人王の大本命」、ロッテ・藤岡が振り返る1年目。
一方で、「×」とした選手はというと、その多くが「即戦力」という評価や結果を意識し過ぎたが故に、思うような成績を残せなかったと判断できる。
ロッテの藤岡は、その典型的な例だった。
「1年間、一軍で続ける難しさは最初から分かっていたつもりでしたけど、想像以上に辛かったです」
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彼は、このようにルーキーイヤーを振り返っていた。
ドラフトでは「最大の目玉」と注目され、春季キャンプが始まると自身はひと言も明言していないのに「新人王の大本命」と囃し立てられる。シーズンでも敵地での開幕カード3連勝がかかったゲームや、4月に3勝を賭けたマウンドに上がると、前日のスポーツ紙に「快挙か?」と煽られる。
「自分は知らなくても、新聞とかにそう書いてあるのを見てしまうとプレッシャーになっちゃったりするんですよね」
藤岡はそう苦笑いしていた。アマチュア時代に実績を残してきたことからも分かるように、彼は決してプレッシャーに弱いわけではない。ただ、あたかもチームの命運を託されたかのような報道をされてしまっては、誰だって多少なりとも気負ってしまうものだ。
6月に入ってからの藤岡は、結果を求めれば求めるほど打たれるようになった。ファーム落ちも経験し、終わってみればシーズン6勝。新人王最有力候補と呼ばれた選手にとっては、物足りなさだけが残る1年となってしまった。
「ポスト金本」と期待された阪神・伊藤は“職人気質”が仇に?
阪神の伊藤もそうだった。
大学時代から、「僕は結構、深いところまで突き詰めていくほうで、練習にしても、やるなら質を高めるためにはどうすればいいかを考えるタイプですね」と言っていたように、“職人気質”の選手である。
プロ1年目は、それが逆に仇となった。
「ポスト金本」とレギュラーをほぼ約束されながらも、オープン戦では打率1割台。開幕一軍を手にしたが即ファーム落ち。その後も一軍、二軍を行き来するなど、職人気質である彼が巻き返しを図るには、時間が足りな過ぎた。結局、9月27日のヤクルト戦で放ったプロ1号の満塁弾以外、シーズンでの伊藤の見せ場は、全くと言っていいほどなかった。