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野洲サッカーを育てた異端の指導者、
岩谷篤人が挑む“最後の選手権”。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byShinya Kizaki

posted2012/12/30 08:01

野洲サッカーを育てた異端の指導者、岩谷篤人が挑む“最後の選手権”。<Number Web> photograph by Shinya Kizaki

身振り手振りをまじえ、野洲高校の生徒たちを教える岩谷。冬の全国高校サッカー選手権大会は、今年で2年ぶり8回目の出場となった。

岩谷サッカーの集大成となる今回の選手権。

 しかし、そのコンビを、もう来年度は見られない。岩谷が今年度限りで、野洲から離れることが決まっているからだ。

 もともと岩谷は、野洲のヘッドコーチを3年間限定で引き受けたつもりだった。だが乾が「自分の卒業まで見てほしい」と懇願して1年延長。そのまま辞められなくなり、時が流れていった。だが、区切りをつけるために、10年目となる2013年春で辞めることを決心。すでに現在の高3が入学してくるときに、「自分は3年後にいなくなる」と告げていた。

 つまり、今回の選手権は、岩谷サッカーの集大成でもある。

「高校サッカーの考え方を、根本から変えてやろうと思っている」

 岩谷は不敵に言った。

「今大会で高校サッカーの考え方を、根本から変えてやろうと思っている」

 これは決してハッタリではない。2006年の優勝から約7年が経ち、野洲のサッカーはさらに進化しているからだ。ドリブルを得意とする個人が、ショートパスで融合するという高次元のサッカーに取り組んでいる。

 岩谷のたとえは、常に個性的だ。

「個人がドリブルするだけでは、所詮ひとりの人間の2本の足にしかすぎない。2人がパスで組み合わされば、2本の大きな足になる。それが3人、4人となったら、もっと巨大な足になる」

 この独特の世界観を理解するのは簡単ではないが、ここでは入門編として3つのキーワードを取り上げたい。

「走ったら正確にボールを扱えない。歩けば、より技術を出せる」

 1つ目は「歩くサッカー」だ。

 野洲の練習に行くと、岩谷の指示に驚かされる。「攻撃になったら、歩けぇ」と声をかけているのだ。

 現代サッカーでは、攻撃のときは立ち止まらず、走り続けることがいいとされている。だが岩谷はこう考えている。

「走ったら正確にボールを扱えない。歩けば、より技術を出せる」

 もちろん試合の場面に応じてスプリントも必要だが、狭いスペースでプレーするときは、歩くくらいの余裕を持てということだ。

【次ページ】 スモールフィールドでの戦いと2バック、時々1バック。

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