サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「ポスト遠藤」と日本サッカーの未来。
“最後の黄金世代”を越えて行け!
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/17 14:25
代表における“最後の黄金世代”の遠藤。ガンバ大阪がJ2落ちしたことにより、32歳の身体にかかる負担はさらに増すこととなったが……。
近年の日本サッカーを急速に飛躍させた直接的な源流は、1999年のワールドユース(現U-20W杯)準優勝にあると常々思っている。
三浦知良がブラジルから帰国したのが'90年7月。この“事件”によって幕を開けた'90年代は、「Jリーグ発足」「ドーハの悲劇」「マイアミの奇跡」「ジョホールバルの歓喜」と次々に押し寄せる大波の後押しを受けて右肩上がりの成長曲線を描いた。
世界に挑んでは敗れ、また世界に挑もうとする道のりはあまりにも険しかった。だが、日本サッカーは着実に、世界との距離を縮めていく。浮き沈みを繰り返しながら一歩ずつ前に進むその姿に、誰もが今まで味わったことのない興奮を覚えた。
しかし、日本にとって初めてのW杯となった'98年フランスW杯の惨敗で、積み上げた自信は一度崩れた。
その成長に確かな手応えを感じていたからこそ、心のどこかで抱いていた小さな期待を打ち砕かれたショックは小さくない。あの大舞台で、ガブリエル・バティストゥータが挙げたたった1つのゴールで勝ち点3を手にするアルゼンチンの強さに、1-0という結果をはるかに超える“差”を感じた。
ところが約1年後、日本は世界を相手に“差”を見せつける。ナイジェリアのピッチで躍動したのは、20歳以下の血気盛んな若者たちだった。
『キャプテン翼』を再現するかのような黄金世代の活躍。
小野伸二、稲本潤一、高原直泰、本山雅志、中田浩二、遠藤保仁、小笠原満男――。「黄金世代」と称された彼らは、イングランド、カメルーン、アメリカと同組のグループリーグを勝ち抜き、決勝トーナメントでポルトガル、メキシコ、ウルグアイを撃破して決勝に駒を進めた。
20歳以下の年齢制限付きとはいえ、舞台は世界一の称号を争うW杯である。日本がそのファイナルを戦うことは、前年のフランスW杯を体感して「非現実的」と理解せざるを得なかった。ところが彼らは、W杯の決勝でスペインと対峙するという偉業を、いともあっさり成し遂げたのである。それは、まるで『キャプテン翼』に描かれた世界が現実世界で次々に再現されているかのような夢物語だった。
中盤では遠藤や小笠原、稲本といったタレントがそれぞれに個性を発揮し、キャプテンの小野がイメージを超えるスルーパスで決定機を作る。本山がしなやかなボールタッチとスピードで左サイドを切り裂き、高原はDFとの駆け引きを制して華麗にゴールを奪う――。シャビを擁するスペインとの決勝は惨敗に終わったが、世界を相手にむしろ翻弄する余裕さえ見せた彼らの姿には、フランスW杯で突きつけられた厳しい現実を忘れさせるだけの希望があった。