スポーツで学ぶMBA講座BACK NUMBER
企業の味方、優良顧客を獲得する道。
QVCマリンで体験した感動的な夜。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/12/18 10:30
施設命名権の売却により、2011年から「QVCマリンフィールド」となった千葉マリンスタジアム。ライトスタンドを中心に、一体感のあるマリーンズファンの応援は、他球団のファンからも称賛されている。
シャンプーの「メリット」が売れ続ける理由。
実は皆さんの周りにも、秀逸なプロモーションによって顧客ロイヤルティを高めている製品が多々ある。
例えば、シャンプーの「メリット」。メリットはロングセラー商品であるため、認知度(Awareness)は高い。また、一度は使ったことがある人も多いのではないだろうか(Trial)。花王はメリットのTVCMやプレゼントキャンペーンなどを通して、AwarenessやTrialの維持にも力を入れている。その一方で、主要顧客層である母親(TVCMのイメージからもわかるだろう)に対し、ママ友が集い交流を促進するコミュニケーションサイト「メリ友.com」を立ち上げ、顧客と企業の「共創」を推し進めることでLoyalty向上にも努めている。メリットはリンスインシャンプーの中でシェア36.3%を占め市場をリードする製品となっている(日経MJ 2012年3月2日)。
一方、同じ花王のシャンプーでも比較的新しく市場に投入している「セグレタ」は、AwarenessやTrialの向上が課題になるため、Loyalty向上の施策よりも、TVCMや美容関連サイトとのタイアップなどのプロモーションに注力しているようだ。
同じ企業の同じカテゴリーの商品であっても、ロイヤルティを持つまでのプロセスの中でどのステージ上にいる顧客が多いかは製品ごとに違う。したがって、それぞれの製品・サービスにおける顧客の状態に合わせて、よりプロセスの右(ロイヤルティ向上の)方向に顧客の心理状態・行動が変容していくよう、注力するプロモーションを選択し実行することが非常に重要となる。
(なお、上述紹介したフレームワークはあくまでも一例である。このようなフレームワークを参考にしながら自社の顧客にあった変容プロセスを作成し、活用することができよう)
プロモーションの目的は何か、効果が出ているのか。
このように顧客の心理プロセスに載せてプロモーションを考えることはビジネスの世界ではよくある。プロセス化ということを通して、訴求したい「価値」(価値の重要性は前回のコラムをご参照いただきたい)を顧客と共に創り、届けていくためのプランを練ることをお勧めしたい。
皆さんのプロモーション施策の1つ1つはどのような目的で行っているのか、そしてそのプロモーションはその目的に対して効果が出ているのか、最終的にはファンになってもらいそのファンと共に共創価値をつくっていくことを意識したプロセスの中で考えられているかを見つめ直してみるとよいであろう。
今回のポイント
◆企業が価値を一方的に顧客に伝える時代から、顧客と共に価値を作りだす時代へと変化している
◆「共創価値」を作るための大前提は、顧客のロイヤルティを上げることである
◆その際には、ロイヤルティを構築するまでの顧客の心理・行動変容をプロセス化してみることも有効
【参考文献】
フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン 『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』
恩藏直人、ADK R3プロジェクト 『R3コミュニケーション―消費者との「協働」による新しいコミュニケーションの可能性―』
【参考資料】
Jリーグ 年度別入場者数推移
http://www.j-league.or.jp/data/view.php?d=j1data&g=j1_0&t=t_visitor&y=2012
パシフィック野球連盟 2012年度パシフィック・リーグ観客動員数
http://www.npb.or.jp/statistics/attendance_2012pl.pdf
セントラル野球連盟 2012年度 セントラル・リーグ選手権試合入場者数
http://www.npb.or.jp/statistics/attendance_2012cl.pdf