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最底辺のボローニャに場違いな2人。
“劇薬”はチームを変えられるか? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byGetty Images

posted2012/11/30 10:31

最底辺のボローニャに場違いな2人。“劇薬”はチームを変えられるか?<Number Web> photograph by Getty Images

2014年W杯予選のイタリア代表にも選ばれたディアマンティ(右)とジラルディーノ(左)。

ミラン首脳陣の心証を損ねた「移籍を考えるかも」発言。

「自分は生き急いだんだと思う。今、振り返れば、'07年のCL優勝後のインタビューがまずかった。準決勝で得点していたから、リバプールとの決勝では必ず先発だと信じていた。実際は後半のわずかな時間の出場だけで、その失望から『移籍を考えるかも』と言ってしまった。その後パト獲得に動いたクラブを見て、自分が浅はかだったと悟ったよ」

 何気ない一言が指揮官や上層部の心証に大きく影響することを考えなかった。ピッチの外でもアピール力を問われたが、スターになり損ねた彼は、時代に取り残されたストライカーだといえるかもしれない。

 だが、実力だけがモノを言うグラウンドの中で、ジラルディーノは今も掛け値なしの一線級FWだ。「FWについて語ることができるのはゴールだけ」を信条とする彼の得点能力は未だ錆びついていない。チームの貴重な得点源として今季すでに6ゴールを挙げた。10月のブラジルW杯予選では、1年ぶりに代表復帰を果たしている。

ディアマンティのきつい叱責でチームの雰囲気は険悪に。

 半世紀近く前の最後のスクデット獲得を記憶している人間は、ひなたぼっこにいそしむ年金世代しかいない。経営難に苦しむ多くの地方クラブの例に漏れず、ボローニャもトップが頻繁に変わる、数年来の御家騒動の渦中にある。

 2年前、クラブの破産危機を招いた当時の会長へ辞任要求を突きつける一部の過激サポーターが、練習場入り口の門に、“豚の首”を掲げたことがあった。一見物騒に思える事件だが、門に刺さっていたのは、屋台でも食べられる丸焼きの頭部を切り取っただけのもので、抗議は練習場に食欲をわかせる香ばしさを漂わせただけで終わった。地方クラブの牧歌的匂いは抜けないままだ。

 昨季までの得点源だった元イタリア代表FWディバイオと若きウルグアイ代表MFラミレスが去り、キャプテンマークを受け継いだディアマンティは、ともに一流を知るジラルディーノとともにチームを牽引することを決意したが、肝心の結果がついてこない。

 12節で残留争いの直接ライバルであるトリノ相手に不甲斐なく敗れると、ディアマンティは試合後に「俺とジラルディーノは前線で孤立している。サポートが足りない」と遠慮なくまくし立て、チームメイトへさらにきつい毒を吐いた結果、ロッカールームの関係がぎくしゃくしたものになってしまった。

【次ページ】 「野心的でアクの強い選手の存在は必ず必要だ」と監督。

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