セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
最底辺のボローニャに場違いな2人。
“劇薬”はチームを変えられるか?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2012/11/30 10:31
2014年W杯予選のイタリア代表にも選ばれたディアマンティ(右)とジラルディーノ(左)。
開幕から底辺を彷徨うボローニャに、場違いな2人がいる。MFディアマンティとFWジラルディーノの新旧イタリア代表コンビだ。
その実力からいえば、スクデット争いをするクラブのレギュラーでもおかしくないのに、彼らが1面トップ記事を飾ったり、テレビCMに起用されることはない。降格圏が指定席のチームにあって、彼らの実績やテクニックは抜きん出ている。2人の存在は、牧歌的な地方チームにとって、劇薬に等しい。
「俺が代表に呼ばれない理由がさっぱりわからないね」
昨年の夏、ボローニャへ入団したばかりのディアマンティはいきなりの大言壮語で物議を醸した。外野の声などどこ吹く風で見事チームを残留に導くと、EUROに挑むイタリア代表の座を射止めた。
本大会では、アズーリ唯一の本職トレクアルティスタ(トップ下)として攻撃のアクセント役を担い、準優勝獲得の推進力に。放射状のドレッドヘアが特徴的な左利きのテクニシャンは、ブラジルW杯予選を戦う現代表でも欠かせない戦力だ。
自由奔放な天才ディアマンティは「取扱注意」の劇薬。
セリエBチームを転々とする中で技を磨き、'09年に移籍したウェストハムでプレミアリーグも経験した。遅咲きの苦労人のようだが、地方チームに埋もれているには理由がある。
「どうせ同じ稼ぎなら、インテルで10番目の選手になるより、ボローニャで大将やってる方が気分いいだろ?」
天才型のディアマンティは自由奔放だ。“歯に衣着せぬ”レベルで済めばいいが、放送禁止用語も連発する。そうでなくとも目立つ全身のタトゥーとも相まって、対外イメージを大事にするビッグクラブから毛嫌いされる。
技術は一流、効果も確か。しかし、彼は処方箋に「取扱注意」とただし書きされている劇薬のようなものだ。
ゴールを量産するジラルディーノは己の不遇をかこつ。
一方で、所属先を問わずゴールを重ね続けるFWジラルディーノは、“静かな”劇薬といえる。彼はセリエA通算152ゴールを誇る、紛れもない一流ストライカーだ。トッティ(ローマ)、ディナターレ(ウディネーゼ)に次ぐ現役3位の得点記録保持者は若くして頭角を現した。'02年に加入しゴール量産を始めたパルマが、オペラ歌劇の本場だったことから、バイオリンを奏でるスタイルで、彼独特のゴールパフォーマンスが生まれた。
ドイツW杯を制して世界一になったときも24歳になったばかりだった。ミランでCLもクラブW杯も制した。フィオレンティーナ、ジェノアと所属先は流転し、レンタル先のボローニャで働き盛りの30歳のシーズンを迎えたジラルディーノは、自身の不遇の理由を自問自答する。