濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
高校生コンビがプロのリングで見せた、
圧巻のKO劇と底なしのポテンシャル。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2010/06/21 10:30
名古屋・大石道場の三羽烏こと、日下部竜也(写真左)と野杁正明(写真中央)、小川翔(写真右)。高校生プロ格闘家として修練に励む
格闘技界には、“甲子園”とプロをかけもちする選手たちがいる。
日下部竜也(写真左)は、1992年7月18日生まれの17歳。中学時代からタイで試合を行ない、「名古屋にとてつもなく強い子がいる」と東京の関係者にも噂されていた。2008年にシュートボクシングでプロデビューを果たすと、その年に高校生トーナメント『K-1甲子園』でベスト4の成績を残す。
この活躍で“全国区”となった日下部は、今年に入ると再度、プロのリングへ。62kg級の『K-1甲子園』では体格差に苦しむこともあった日下部だが、55kg級で本来の能力を爆発させた。
“天才”日下部竜也、連続KOでタイトル挑戦権獲得。
6月6日のシュートボクシング後楽園大会。55kg級のタイトル挑戦者決定トーナメントに出場した彼は、準決勝で尹戸雅教、決勝で伏見和之を連続KOしてみせた。パンチ、蹴り、ヒザ、回転技とあらゆる技術を使って相手のエネルギーを削り取る闘いぶりは、とても高校生には見えない巧みさ。また、2試合ともKOは2度目のダウンで達成されている。手負いの相手を確実に仕留めるフィニッシュ力、“倒しどころ”を逃さない嗅覚にも優れているわけだ。このまま9月のタイトルマッチを制しても、誰も驚かないだろう。そう思えるほど凄まじい連続KO劇だった。
そんな日下部の後を追うように登場したのが、同じ大石道場に所属する1歳年下の野杁正明(のいり まさあき/写真中央)である。“名古屋の天才少年”日下部に対し、野杁につけられたキャッチフレーズは“怪物一年生”。昨年、『K-1甲子園』に初出場し、すでに名の知られた高校生ファイターたちをなぎ倒して優勝を果たしている。当然、今年の目標は2連覇だが、彼の才能もまた、高校生の試合という器だけには収まらなかった。
今年3月に地元の興行でプロデビューし、4月には後楽園ホールで開催された『Krush』に登場。キャリアも年齢もはるかに自分を上回るソルデティグレ・ヨースケを手玉に取り、最後は飛びヒザ蹴りで失神KOに追い込んでみせた。