「僕は、もう与えられたポジションで頑張るしかない」

　岡崎にとって不運だったのは、世界の本当の凄味をW杯直前に思い知らされたことだ。もし、日本代表が積極的に海外に出て試合経験を積んでいれば、岡崎が直前に自信を失うことも日本がここに来てコロコロとシステムや戦術を変えることもなかっただろう。

　しかし、時すでに遅し、である。

　ジンバブエ戦では、イングランド戦のシステムに戻し、1トップに本田圭佑を置いた。本田に押し出された岡崎は、サブ組でサイドアタッカーとしてプレーした。永らく自分のポジションだったトップの座を彼は、サブ組の中でも失った。

「僕は、もう与えられたポジションで頑張るしかない。サイドでもいいですよ。1トップがあまり起点になれないならサイドが重要になってくる。サイドから裏を狙い続けますよ。あとは、やれることをやっていくしかないなって思っています。裏に走り続けたり、体をぶつけて走ったり、必死にやるしかない。それが自分の持味だし、それでここまでやってきたんで。圭佑には頑張ってほしいけど、複雑ですね。本音を言えば、圭佑に負けたとは思っていないし、1トップでもう１度勝負したい気持ちもあります。でも、今は我慢の時だと思って、自分の出番を待つだけですね。先発なら最初から思い切りやるだけだし、途中からだったら出た時にドカンと爆発すればいいかなと」

伝家の宝刀“裏への飛び出し”はカメルーンDFを破るか？

　岡崎は、自分に言い聞かすように、そう言った。スタメンを失った寂しさは、表情から拭い切れていない。一度、失われたポジションは、そう簡単に手元には戻ってこない。だが、チャンスがないわけではない。カメルーン戦、スタメンか途中出場かは不明だが、いずれにせよ、出番はやってくるはずだ。

「こんな状態で終われないですよ。ここに来る前に3点取るって宣言してきたんで……1分でも出て、点取りたいっすね」

　伝家の宝刀「裏への飛び出し」が、カメルーンのDF陣を切り裂く、そのイメトレは完璧だ。そうして、W杯本番のゴールで失った主役の座を取り戻す。