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セリエB降格もチラつき始めたミラン。
名門を救うのは3-4-3かアラブ資本か。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2012/10/31 10:30

セリエB降格もチラつき始めたミラン。名門を救うのは3-4-3かアラブ資本か。<Number Web> photograph by AFLO

有名選手がいなくなったミランの今後を背負って立つエルシャーラウィ(左)。エジプト人の父を持つハーフで、「ファラオーネ(ファラ王)」のニックネームで親しまれている。

 ユニフォーム・カラーが赤と黒でなければ、このチームを天下のミランだと見分けるのは難しいのではないか。今季大幅に戦力ダウンしたミランが、ズルズルとセリエBへの降格圏に近づいている。

 10人の相手に失態を晒した7節ミラノ・ダービーに続いて、8節ラツィオ戦でも3失点敗戦。勝ち点3制度が導入された'94-'95年シーズン以降初めて、セリエA8節終了時点で黒星5つが並ぶ由々しき事態だ。

 2012年の秋、リーグ最下位から数えて“3番目集団”にミランと並んだのは、ボローニャとキエーボ、そして昇格組ペスカーラ。勝ち点1を取るのに四苦八苦するミランは、“プロビンチャーレ(地方クラブ)”の中に埋没し、降格圏内でもがいている。

 チャンピオンズリーグを7度も制した名門中の名門を“田舎クラブ”と同等に扱うのには抵抗があるが、現在のミランの競合相手は、もはや昨季の無敗王者ユベントスや欧州の覇権を狙い続けるレアル・マドリーではない。10月24日のCLグループリーグ3節では、アウェーゲームながら新参マラガにも敗れ、10年ぶりに国内外通じての3連敗を喫した。ミランは凡庸な田舎クラブのレベルにまで成り下がってしまった。

現実的な目標は、“ベルルスコーニ時代のワースト記録の回避”。

 黒星が積み重なっていく惨状に、古参ミラニスタたちの脳裏をよぎるのは、“'82年の悪夢”だ。のろい歩みの勝ち点ペースは7節まで同じで、16節に監督ラディーチェが解任された。後任の監督ガルビアーティも立て直しに失敗し、最終的に16位中14位でセリエBにあえなく降格した。

 '96-'97年シーズンにも、クリスマスを迎える前にタバレス(現ウルグアイ代表監督)のクビが飛んだ。後任にはサッキ監督が就いたが、いったん足並みが乱れたチームの再建は困難を極め、11位に持ち直すのがやっと。翌年に復帰したあの名将カペッロでさえ10位と低迷した。

 今季、大幅な戦力ダウンとローコスト路線でかき集められた半端な戦力で苦戦を強いられるアッレグリ監督は、9月からいつ解任されてもおかしくない状況が続いている。解任時には、タソッティ副監督が後釜を務めるプランが出来上がっているが、不振を極める今季の現実的な目標が“ベルルスコーニ時代のワースト記録である11位は絶対に回避せよ”であることはクラブ内の暗黙の了解となっている。

【次ページ】 いよいよ現実味を帯びてきた中東資本の進出。

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