セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエB降格もチラつき始めたミラン。
名門を救うのは3-4-3かアラブ資本か。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/10/31 10:30
有名選手がいなくなったミランの今後を背負って立つエルシャーラウィ(左)。エジプト人の父を持つハーフで、「ファラオーネ(ファラ王)」のニックネームで親しまれている。
いよいよ現実味を帯びてきた中東資本の進出。
'86年2月の買収以降、絶対権力者として君臨してきた大富豪のベルルスコーニ元首相は、26年間に約6億ユーロをミランへ費やしてきた。
ただし、76歳になったオーナーの影響力にも陰りが見え始めた。脱税疑惑による訴訟に敗れ、10億円近い追徴課税判決が出たばかり。来年4月に予定されているイタリア国会総選挙を控え、政争にも追われる。27日の緊急会見では、ついに「ミランにかまっている余裕はない」と表明。
もはやベルルスコーニ個人の財布は当てにできない。10月中旬には、クラブの株式30%を2億5000万ユーロ相当で「カタール・インベスティメント・オーソリティ」グループへ譲渡する計画あり、との報道がなされた。上層部も完全否定はせず、いよいよイタリアの伝統クラブへの中東資本進出が現実味を帯びてきている。
アッレグリは、FWエルシャーラウィを活かすべく3-4-3を導入。
ただし、現場にとって最も大事なのは、不確かな明日のアラブマネーより、目の前の1試合だ。またも守備の脆さを露呈したラツィオ戦後、いよいよ危機感を募らせたチームは緊急合宿に突入した。
布陣のトライ&エラーを繰り返してきた指揮官アッレグリは、FWボージャンを使っての4-2-3-1をあきらめ、頭角を現してきたFWエルシャーラウィを新エースとして活かすべく、CLマラガ戦でまさかの3-4-3導入に踏み切った。サイドアタックを多用するマラガ相手に実際は5バックになり、恥も外聞もかなぐり捨てて守りにいったが、そう簡単に結果は出ない。
苦戦の原因が、近年例を見ないほどの極端な戦力削減にあることは誰の目にも明らかで、“ミランは苦戦して当然”、“監督解任は何の解決にもならない”と、アッレグリには同情論まで出てきた。何度目かになる己の進退を賭けた9節ジェノア戦を前に、彼は弱みも見せず「これまでに多くの修正を施してきたが3バックこそ、このチームには合っている。今後も3バックでいく」と言い張った。