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セリエB降格もチラつき始めたミラン。
名門を救うのは3-4-3かアラブ資本か。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2012/10/31 10:30

セリエB降格もチラつき始めたミラン。名門を救うのは3-4-3かアラブ資本か。<Number Web> photograph by AFLO

有名選手がいなくなったミランの今後を背負って立つエルシャーラウィ(左)。エジプト人の父を持つハーフで、「ファラオーネ(ファラ王)」のニックネームで親しまれている。

ザッケローニが古巣に寄せた危機脱出へのヒント。

 かつて、アッレグリ同様、ミラン監督就任の初年度にスクデットを獲得した後、連覇を逃し、上層部から十分なサポートを受けられず3季目の苦境に挑んだ指揮官がいた。現日本代表監督ザッケローニだ。3-4-3にこだわった彼もまた絶対権力者ベルルスコーニと反目しながら、自らチームを投げ出すことはしなかった。伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のインタビューで「ある程度のレベルに達した監督なら、好ましくない状況とも共存する術を知っているはず」と苦難の同業者を気遣い、古巣へ危機を脱出するヒントを述べている。

「サッカーの世界に生きるわれら全員を育ててくれるのは、結局のところ、勝利という乳母だ。低迷から抜け出す唯一の方法は、チーム全員がコンパクトにまとまり、船の舵をまっすぐに取り直すことだ」

 ジェノア戦のキックオフを前に、珍しい光景が見られた。ミランのスタメン全員がピッチに出ると、必勝を期して円陣を組んだのだ。スクデット決定戦でもCLでもない、目の前の1勝のために。

 度重なる黒星が、彼らを円陣というひどく精神的な拠り所にすがるまでに追い詰めたのである。追い詰められたことでミランの選手たちは謙虚になった。

新世代の選手たちの気概が、危機を乗り越える原動力に。

 DFサパタを入れた2試合目の3バックは危なっかしく、まだプレーは綻びだらけで、あちこちがぎこちない。ベテランDFボネーラの奮闘によって何とか無失点に抑えた。国内リーグ戦で1カ月ぶりの完封勝ちだった。

 攻撃でも、アヤックスで3-4-3に慣れ親しんでいたMFエマニュエルソンが見違えるように躍動し始めると、エルシャーラウィが自身20歳の誕生日を祝う6ゴール目を挙げて、勝ち点3を泥臭く奪った。

「サイドを広く使える3トップは自分に合っている。最高の誕生日になったけど、今は地に足つけて、目の前の試合を一つひとつ乗り越えていきたい」

 降格危機を乗り越える原動力は、新世代の選手たちが放つ気概だろう。彼らは、過去のミランに縛られる必要はない。11月6日、マラガをサンシーロに迎え撃つミランは、ちがった顔をしているはずだ。

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