日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ザックジャパンは昔の代表と違う!?
大きく変わった欧州遠征の意味。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2012/10/10 10:30
ザックジャパン初の欧州遠征。12日に対戦するフランス代表とはこれまで1分4敗、16日に対戦するブラジル代表とは2分6敗で1度も勝ったことがない。練習で負傷・帰国した前田のためにも……奮闘を期待したい。
かつて欧州で体験した「非日常」は見慣れた光景に。
だがその状況が変わってきた。
日本は2年前の南アフリカW杯でベスト16に入り、先のロンドン五輪でもベスト4入りした。そして何よりもマンチェスター・ユナイテッド、インテルというビッグクラブでレギュラーを張る者も出てきている。強豪にとって日本という国が「日常」に入りつつあるとの認識を持ち始めてもおかしくはない。
そしてザックジャパン。欧州に渡ったばかりの選手もいるものの、欧州でプレーすることで世界基準での戦いを「日常」としている選手が一気に増えた。たとえ相手がフランスだ、ブラジルだと言ってもそこまで「非日常」と捉える選手はそういないはず。時差調整もないし、ピッチの質など環境にも慣れていることは、ポテンシャルを発揮しやすい状況だと言える。
日本人選手に注がれる欧州クラブからの熱い視線。
国内組も国際経験のキャリアが豊富なメンバーが名を連ねており、かつてのように「世界レベル=非日常」の意識が薄れているように感じる。経験の積み重ねによって世界レベルの入り口まで来ているという実感を、彼らも得ているのではあるまいか。
また、香川真司のネームバリューが欧州内で一気に高まっていることを受け、日本人選手に対する欧州各クラブの強い関心も出てきた。
もちろん選手たちにとって遠征の目的はチームのレベルアップを図ることが一番。ただビッグクラブへの移籍を模索している本田や、所属のヴォルフスブルクで出場機会に恵まれていない長谷部、そして欧州内でステップアップを目指す者にとっては格好のアピールの舞台ともなる。こういった個々の事情も「日常」に絡んできている。過去の欧州遠征とは明らかに状況が異なってきているのだ。
今回の欧州遠征におけるザックジャパンのテーマとは?
ではフランス、ブラジルという列強との戦いで、ザックジャパンは何を得なければならないか――。
大事なのはチームを立ち上げてこの2年間で積み上げてきた「日常」をしっかり出し切る努力をすることだ。ボールをキープする時間は短くなってくるだろうが、全体をコンパクトにしてスピーディーなパスワークでゴールに迫るスタイルがどこまで通用するか。ここにチャレンジすることで、今後の方針も見えてくる。
世界の列強相手にある程度通用すれば、現メンバーを軸にしてこれまでのスタイルを踏襲するだろうし、手応えが乏しければカウンタースタイルに向いているような選手をチョイスしてスタイルを修正してくる可能性もある。