フットサル日本代表PRESSBACK NUMBER
カズはフットサルの代表で輝けるか?
合宿の現場で目撃した課題と希望。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKyodo News
posted2012/09/27 11:25
代表合宿から一時離れ、横浜FCへと戻る直前のカズ。監督や選手たちとのコミュニケーションは非常に良好のようだった。
キング・カズが未知なる領域へ踏み出した。フットサル日本代表として、11月にタイで開催されるワールドカップでのメンバー入りを目指しているのだ。
代表チームのウェアに袖を通すのは、フィリップ・トゥルシエが日本代表を率いていた2000年12月以来、実に11年9カ月ぶりとなる。もはや閉ざされていたと言っていい三浦知良の代表でのキャリアが再起動したことで、周囲は歓迎ムード一色に染まっている。
チーム内でのコミュニケーションについては、すでに不安を一掃している。スペイン人のミゲル・ロドリゴ監督とは、通訳なしでもある程度の会話が成立する。若いチームメイトは、食事のテーブルで競い合うようにしてカズを囲んだ。
「昔の代表ではテーブルでひとりになることもあったんですけど、みんなが積極的に僕のところに座ってくれてね」とカズも笑顔を浮かべ、「テーブルが満席になったのは代表で初めてじゃないですか」と記者を笑わせた。
想定内ではあるものの、現時点ではチームメイトに見劣りしている。
城彰二、小倉隆史、岩本輝雄、前園真聖、中田英寿ら、期待の若手が日本代表へ招集されるたびに、カズは率先して声をかけてきた。サッカー選手としてのカリスマ性をオープンで飾らない性格が引き立たせ、新しいチームメイトもすぐに惹き付けた。
「どんなチームでも最初ってすごく大変だし、慣れるまでに時間がかかるもの。それだけに、リラックスしたムードで僕を迎えいれてくれたのは大きかったですね。次のキャンプでは、もっともっとコミュニケーションが深まると思いますよ」
気になるのは時間の短さだろう。
フットサル日本代表は9月24日から26日までトレーニングキャンプを行なったが、カズは25日午前でチームを離脱した。所属する横浜FCの練習に参加するためだった。10月上旬のトレーニングキャンプも、部分的な合流となってしまう見込みだ。
チームメイトと同じ練習量を確保できないにもかかわらず、身につけるべき個人スキルは誰よりも多い。想定内ではあるものの、現時点の彼はチームメイトに見劣りしている。
ディフェンスにフォーカスを当てた25日の練習では、動きにはっきりとした戸惑いが滲んでいた。全体の動きがスピードアップしても、カズだけは床を擦るシューズの音がワンテンポ遅れていたのである。
「フットサルはスペースが狭くて切り替えが速いので、判断をひとつ間違うと一気にゴールへ直結してしまう。そのへんの守り方はサッカーと少し違うので、やっぱり慣れというものが必要ですね」