欧州サムライ戦記BACK NUMBER
「日本人らしさ」で勝負せず――。
岡崎慎司が歩む“清武らと違う”道。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAP/AFLO
posted2012/09/25 12:05
ブンデスリーガに来てからはMFとしての扱いが増えていた岡崎。“点取り屋”としての本来のプレースタイルを取り戻せるか?
岡崎に発想の転換を迫らせたショッキングな出来事とは?
岡崎がドイツに来てから、すでに1年と9カ月が経とうとしている。
最初の1年半は試行錯誤の連続だった。得意のダイビングヘッドは封印してでも、攻撃の組み立てに参加するように意識した。守備も労を惜しまず、常にバランスを心掛けてプレーした。怪我などが原因で一時的に戦列を離れることがあるにせよ、シーズンを通してみればレギュラークラスの出場機会を得ているのは岡崎だった。
しかし先日、ショッキングな出来事があった。
シュツットガルトのラバディア監督のインタビューでのやりとりを目にしたときだ。なぜ岡崎をレギュラーとして起用するかについて、ラバディア監督の答えはこうだった。
「岡崎は、守備でも頑張ってくれるから」
「前目の選手だと、ストライカーだと思われたいんです」
守備での貢献度を買ってくれることについては素直にありがたいと岡崎は思っている。しかし……。
「俺がわざわざ低い位置まで下がっていって、攻撃のリズムを作ることにはあまり意味がないなというのがわかったんです。それやったら、ガンガン仕掛けて目立たないといけないし、クロスに対してフォワードのようにゴール前に入っていって点を決めたり。そういうことをドンドンしていかないといけない」
だからこそ、練習から心がけている。低い位置まで下がらずに相手のDFラインの裏を狙ったり、高い位置でボールを受けて、自らドリブルで仕掛けていくことを。
「だからね、俺は中盤の選手というイメージを吹き飛ばしたいんですよね。もっと、前目の選手だと、ストライカーだと思われたいんです」
岡崎はシュツットガルトでは、こんな風にほめられるという。
「お前は、左右のどっちの足も上手く使えていいなぁ」
「日本人だから、やっぱり技術があるよなぁ」
そうした美辞麗句を片耳で聞きながら、岡崎は自分にとって本当に大切なことは何かと考えている。
「(香川)真司とか清武とか、宇佐美とか、さらに永井(謙佑)とか、いろんな選手がこれから出てくると思うんですよ。俺は足元で受けて、そこからどうしようかと考えるより、縦へ出ていく強さをもっと磨く。強引にでもシュートを打って、こいつは一発持っているというような、怖さを相手に与えられるようにしないと」