欧州サムライ戦記BACK NUMBER
「日本人らしさ」で勝負せず――。
岡崎慎司が歩む“清武らと違う”道。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAP/AFLO
posted2012/09/25 12:05
ブンデスリーガに来てからはMFとしての扱いが増えていた岡崎。“点取り屋”としての本来のプレースタイルを取り戻せるか?
日本人としての長所を考え尽くして至った理想とは?
日本代表でレギュラーとして活躍し、ここまで現日本代表の選手としては最も多くのゴールを決めているのは、岡崎なのだが……。そうした若い選手たちの突き上げを意識するのだろうか。
「気になる? うん、まぁ(笑)。でも、嬉しいくらいなんですよ。みんな活躍していることで、あぁ、『俺は、俺だ!』って思えるから。俺の進む道は、ヨーロッパの中で通用する強さを磨いていくしかないから。ガチンコで、ここにいるヤツらと勝負するしかないから」
ドイツに来てから、ずいぶんと色んなことを考えてきた。自分に出来ることは何なのか。日本人としての長所は何なのか。海外にいれば、自らと向き合う時間は自然と増えていく。それはどんな職業につくものにとっても同じことだ。
そうした時間を経て、岡崎はヨーロッパのフットボーラーとしてのロジック、カルチャーの中で生きていこうと考えるようになった。日本人特有の良さを活かすのではなく、ヨーロッパのフットボーラーの中で目立つ存在になろうとしているのだ。
欧州で生きることを決めた岡崎慎司が持つ、図抜けた体の強さ。
これからは日本人だからという理由だけで持ちあげられることはなくなるだろう。今のブームの恩恵も受けられないかもしれない。ファンからすれば、ヨーロッパのロジックで生きる選手が不甲斐ないプレーをすれば、怒りをぶつけたくなるだろう。しかし、岡崎は以前、日本代表でも自身の立ち位置について、こう語った男である。
「チームにはいろんな選手がいると思うけど、自分はストライカー。点をとれなかったら、自分を叩いて欲しい」
だから、今は不敵な笑みを浮かべてこう話す。
「一対一では絶対に負けないという、体の強さを得るために今は鍛えているから。良い状態なんですよ」
現在、ブンデスリーガでプレーする日本人選手の中で最も体が強いのは、まぎれもなく岡崎である。そのプレーは、当たりに弱いと言われる日本人像とはかけ離れている。
日本人であるからこそ、我々は考えないといけない。日本人の良さとは異質の強さを持つものが、代表で躍動することが、どれだけ魅力的なのかを。