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残り10節、混沌のJ1優勝争い。
均衡した戦力バランスは是か非か!?
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/09/15 08:02
五輪出場を逃したが、浦和で存在感を発揮する原口元気。純粋なドリブラーは日本代表でもアクセントになれる可能性を秘めている。
天皇杯でFC今治に敗れた広島が露呈した弱点。
メンバーを固定して戦うことのリスクは、ピッチに立てないメンバーの士気を保つことの難しさと、主力組を何らかのアクシデントで欠いた際の対応力を養いにくいことだ。広島に関しては、ベンチ入りを果たしたことがある27選手のうち、5試合以下の出場機会しか与えられていない選手が11人。そのうち一度もピッチに立っていない選手は6選手もいる。ここまで“戦力”として実質的にチームに貢献できなかった選手が、あまりにも多い。
そんな中で迎えた9月8日の天皇杯2回戦、広島は格下を相手に不覚を取った。
8月25日の第23節FC東京戦でミキッチ、さらに9月1日の第24節磐田戦で青山敏弘が負傷。おそらく戦力を試す意味を込めてメンバーを大幅に入れ替えた天皇杯2回戦で、広島は四国リーグのFC今治に敗れるという屈辱を味わった。この試合で露呈したのが、試合後の佐藤寿人が口にした「普段から出ている選手と(出ていない選手)の力の差」である。
浦和は、広島と同じ“戦力安定ゆえのリスク”にどう対処する?
「全員で戦う」「サポーターのために」「最善の準備」「泥臭く」と熱っぽい言葉を常々口にする指揮官、森保一のここまでの統率力は見事のひとことに尽きる。ペトロビッチ前監督によって一度完成したチームを引き継ぎ、それを継続しながらパワーアップさせることの難しさは、今季のG大阪の低迷を見れば明らかだ。それを乗り越えてタイトルを手にしようとする挑戦の成否は、自らが作り上げたチームに内在するネガティブな要素をいかに早く取り払うかに懸っている。ルーキー監督として優勝が実現すれば、'93年にヴェルディ川崎をJリーグ初代王者に導いた松木安太郎氏以来の偉業となる。
もちろん、“80%以上の出場率”を同じく8人抱える浦和や鳥栖も、広島と同じリスクを負っている。
浦和はペトロビッチ体制下で明らかな進化を遂げているが、第21節は10人の神戸を相手に痛恨の黒星。第24節大宮戦ではまたしても10人の相手にドローと、勝負どころで勝ち星を拾えない不安定さがある。鈴木啓太と梅崎司が累積警告を3枚抱えていることも含めて、やはり急場の対応力が求められることになるだろう。
もっとも、鈴木のポジションには小島秀仁、梅崎のポジションには宇賀神友弥、さらに最終ラインには濱田水輝、最前線にはポポやデスポトビッチと計算できる戦力を抱えており、“層の厚さ”という意味では広島を上回っている。また、センターFWにポジションを移してからの原口元気の活躍は頼もしい限り。2点目、3点目を奪う決定力不足が課題だが、勢いはある。