Jリーグ万歳!BACK NUMBER
またしても勃発した味スタの芝問題。
J1のスタジアムとしてこれで良いの?
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/09/01 08:01
試合前には凱旋した五輪代表組のセレモニーが行なわれたが、足元はデコボコ。このピッチでは、グラウンダーのパスで組み立てるサッカーは不可能だろう。
草サッカーじゃないんだから――。
録画しておいた映像を観て、思わず声を漏らしてしまった。8月18日に行われたJリーグ第22節、FC東京対大宮アルディージャ。テレビ画面に映る味の素スタジアムのピッチは、もはや芝と呼べるような代物ではなかった。色で表現するなら、「緑」ではなく「黒」。しかも変色しているのは、ピッチの一部分だけではない。
GKが体を投げ出し、選手が密集する中でクロスプレーが頻発するゴール前なら想像も及ぶ。あるいは、副審が同じ場所を何度も往復するタッチライン際が変色している光景もよく見かける。しかし味スタのピッチは、芝が傷んでところどころが剥げているのではなく、ピッチ全体の芝が満遍なく剥げている。全体が黒く変色して見えるのは、おそらく肥料として撒かれた土の影響だろう。
明らかに正常とは言えない状態にテレビ観戦する気さえ失せてしまったのだから、お盆の盛りにスタジアムに足を運んだファンやサポーター、そして誰より、実際にピッチに立つ選手の心境はいかがなものかと考えさせられた。与えられた環境で全力を尽くすのがプロの使命であるとはいえ、あんな状態ではモチベーションに支障をきたしても無理はない。
再発してしまった味スタの芝生不良問題。
そんなことを考えていた矢先の8月24日、スタジアムを管理・運営する(株)東京スタジアムが、ピッチコンディションに関する見解をリリースした。
それによると、ピッチコンディション悪化の原因は、冬芝から夏芝への切り替えが順調でないことにあるという。7月中旬にはここをホームスタジアムとするFC東京、東京ヴェルディの双方から「抗議文兼改善要望書」を受けたが、改善・回復が遅れており、加えて8月25日からの2日間は大規模なコンサートイベントが行われるため、早急かつ大幅な改善が期待できない。そう判断した結果、イベントの直後に芝の全面的な張り替えを実施するという。
しかしこの問題、実は今年に限って起きたことではない。
夏の時期を迎えるピッチコンディションの急激な悪化は、もはや味の素スタジアムの風物詩とも言える現象である。2008年にはFC東京の村林裕社長(当時)が「このままでは戦えない」と声を上げ、ホームスタジアムの移転問題にまで発展した。
騒動の発端は、FC東京はピッチコンディションの影響で主力選手に故障者を出していたこと、さらに芝の状態を悪化しかねない大規模な音楽イベントの開催についてFC東京が事後報告という形で知らされたことにある。結局、この時はスタジアム側が天然芝の全面改修を実施するという形で収束したものの、以降も毎年のように、味の素スタジアムのピッチは夏を迎えると急激に悪化するのである。