なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
女子サッカー界の大スターを止めろ!
ブラジル戦、なでしこの脅威を分析。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byNoriko Hayakusa/JMPA
posted2012/08/03 12:10
ブラジル戦ではFWのマルタやクリスチアーニらをどう止めるかが鍵となる。CBの岩清水(写真中央)、ボランチの阪口(写真左)らの、より一層の奮起が期待される。
注文通りのグループリーグ2位突破で、日本はE組2位のブラジルと対戦することになった。この準々決勝の相手を説明するために、少々時計の針を戻してみたいと思う。
'08年の北京五輪でもブラジルを率いていた現監督のバルセロスは、当時スイーパーを置くマンツーマンディフェンスで最終ラインを構築していた。女子サッカーの戦術の進歩は男子に比べると緩やかであることは否めないのだが、そうした事情を加味してもかなり古色蒼然として見えたものだ。必ず最後尾にスイーパーが残るのでオフサイドを取れず、3バックのため両サイドには広大なスペースがある。つまり構造的に、自陣ゴール深くまで敵アタッカーの侵入を許してしまう守り方だったのだ。
そのバルセロスは北京五輪終了後に退任。跡を継いだリマ監督も同様のディフェンススタイルを選択したのだが、昨年の女子W杯ではアメリカと当たった不運もあり、準々決勝で敗退してしまう。そして大会後、再びバルセロスが代表監督に就任した。
すると彼はいつの間にか宗旨替えし、4バックのラインディフェンス派になっていたのだ。
バルセロスは北京五輪後、米プロサッカーリーグWPSのセントルイスで指揮を執っていた。あるいは3バック文化のないアメリカ女子サッカーに合わせて4バックで戦ううち、自身の考え方に変化が起こったのかもしれない。
が、監督自身も、そして選手もまだまだ4バックでの守り方を消化しきれていないようで、今年4月に親善試合で来日した際には、なでしこに1-4で敗れている。
チームコンセプト浸透の時間が作れず、プレーに連動性が無い。
新生ブラジルは高い位置から積極的にプレスをかけてくるものの、それぞれが単発。日本のように意図を持って特定の取りどころに誘い込んでいくような連動性は皆無だ。
そしてDF陣のラインコントロールも統制が取れておらず、なかなか意図的にオフサイドを取れない。
また、敵のセットプレー時はゾーンで守るのだが、それぞれのマークの受け渡しが甘く、走り込んでくる相手を捕まえきれないことが多い。コーナーキックから大儀見(当時は「永里」姓)が頭で合わせた日本の2点目は、まさにその穴がくっきり浮かび上がったシーンだった。