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女子サッカー界の大スターを止めろ!
ブラジル戦、なでしこの脅威を分析。
text by
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byNoriko Hayakusa/JMPA
posted2012/08/03 12:10
ブラジル戦ではFWのマルタやクリスチアーニらをどう止めるかが鍵となる。CBの岩清水(写真中央)、ボランチの阪口(写真左)らの、より一層の奮起が期待される。
なでしこにとっては比較的戦いやすい個人頼みのチーム。
連係・連動がないのは攻撃も同じ。前述の日本戦では、FWクリスチアーニがボールを持ってもパスコースがどこにもなく、ドリブルしながら
〈誰にパスを出せばいいの!〉
と味方選手に身振りでアピールしていたほど。いわゆる3人目の動きどころか、ボール保持者に対して顔を出しに行くことさえままならないのである。
日本戦後にバルセロス監督が弁明するところによると、ブラジルは、
「主軸クラスが海外でプレーしている上、代表活動の時間がなかなか確保できない」
のだという。だから攻守のコンビネーションの熟成が遅々として進まない、と。
最大の脅威は、4月の対戦ではいなかったマルタの出場。
しかも4月に対戦した際、日本は“パス回しで”ブラジルを圧倒した。
自分たちのお株を奪われる形で大敗した記憶は、ブラジル選手にボディーブローのように効いているはずで、積極的にプレスに行こうとしても〈簡単にかわされるのではないか〉と心でブレーキをかけてしまい、出足が遅れる。その結果、ますます日本のパスがスムースに繋がるといった好循環も期待できるかもしれない。
が、4月には来日しなかったものの、日本にとってのそうした有利な条件をひっくり返してしまえる選手を、ブラジルは擁している。
マルタだ。
今年澤穂希が受賞したFIFA女子年間最優秀選手賞を、昨年まで5年連続で受賞していた女子サッカー界のスーパースター。
身体能力に優れたアメリカ選手をもあっさり置き去りにしてしまう爆発的なスプリント力、意のままにボールを操る超絶テクニック、ここぞというところで必ずシュートを叩き込む決定力。周囲の選手が完璧に抑え込まれていても、一人で形勢を逆転させ、勝負を決める――そのぐらいの突出した能力を彼女は備えている。