ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
サブ組を大胆起用した関塚ジャパン。
宇佐美不発も、得られた3つの収穫。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2012/08/02 12:00
吉田が「どう生かすかがカギになる」と語った宇佐美だが、その才能を存分にアピールすることはできなかった。
D組最終戦となったホンジュラス戦のスタメンを見て、多くの人は目を疑ったのではないだろうか。
前日のなでしこも南アフリカ戦で7人を入れ替えたが、関塚監督もスペイン戦、モロッコ戦のメンバーから、清武弘嗣、東慶悟、永井謙佑、扇原貴宏、徳永悠平を外し、代わりに宇佐美貴史、山村和也、杉本健勇、村松大輔、齋藤学ら5人を先発に起用したのである。試合前日にサブ組の選手の起用を公言していたが、まさかこれほど大胆に変えてくるとは……。石橋を叩いても渡らないぐらい慎重な監督だと思っていたが、どうやらその見方は間違っていたようだ。
この大胆なサブ起用の狙いは、第一に決勝トーナメントに向けて主力の休養のためであり、関塚監督が言った「サブ組のゲーム勘を養っておきたかった」ということだ。ただ、個人的には実戦的なものよりもメンタルを考慮した起用と思われる。
大会が始まるとレギュラーとサブの間で線引きがされ、サブの選手はメンタルの維持が非常に難しくなる。試合に出し、五輪の舞台を経験させることで気持ちをフレッシュにさせる。そして、決勝トーナメントに一体感を持って挑みたかったのだろう。
トゥーロン国際大会とは別人のようだった宇佐美。
とはいえ、首位通過をするためには、引き分け以上の結果が必要となる。大幅にメンバーを入れ替えると攻守に連携の部分で精度が落ちる可能性があり、ホンジュラスの個人技に対応できるのかという不安はあった。そういうリスクを負って関塚監督は、サブメンバーをピッチに送り出したのだ。そして、やはりサブ組中心の即席チームは、いつものテンポでボールを繋ぐことは出来なかった。
それは、宇佐美を見れば一目瞭然だった。質の高い選手とうまく絡むことが出来れば、アッと言わせるプレーを見せるが、この日は周囲を気にし、窮屈そうにプレーしていた。後半、清武や永井が投入されると自分も生きるようになったが、それでもトゥーロン国際大会で見せたプレーには遠く及ばない。出場したサブ組の中で最も期待されたが、「もっと、自分の良さを出したかったけど、結果的に出せなかった」と、不完全燃焼に終わった。