プロ野球亭日乗BACK NUMBER
すでに決戦は始まっている!
交流戦が変えた日本シリーズの戦略。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2010/05/20 10:30
昨年の交流戦、巨人の対日本ハムの成績は2勝2敗。日本シリーズでも第4戦までは五分ながら5戦、6戦を連勝し7年ぶりの日本一を勝ち取った
「交流戦は日本シリーズの戦い方も大きく変えた」原監督。
だが、今はそんなシリーズの戦い方が、時代遅れとなりつつある。
理由は交流戦の存在に他ならない。
「交流戦は日本シリーズの戦い方も大きく変えた」
こう語ったのは巨人の原辰徳監督だ。
昨年のシリーズで日本ハムを4勝2敗で下した原監督は、勝因の一つに「流れを1回も相手に渡さなかったこと」を挙げている。
「去年のシリーズは勝って負けてという展開だったけど、結局最後まで(白星で)追い越されなかった。今のシリーズは先手必勝。そのことに重きを置いて戦略を立てたつもりだよ」
その理由を同監督は説明した。
「ちょっと前までのシリーズだと、第1戦はがむしゃらに勝ちにいくというより探りあい。データで知っている相手と実際に戦う相手を重ね合わせる作業に重きをおく傾向があった。でも、今はシーズン中に交流戦で主力選手、主力投手のほとんどが一度は相手チームと対戦している。選手がすでに生の感触を持っているわけだから、初戦に探りあいをしている暇はない。いきなり胸と胸を突き合わせて、どうだという勝負をしなければ流れを持っていかれてしまうんだ」
すでに日本シリーズに向けた探り合いは始まっている!!
6年前まではシーズン中に別リーグの選手と対戦するのはオールスターぐらいだった。V9時代に日本シリーズで戦うことが当たり前だった巨人の選手たちは、本当の真剣勝負ではなかったが、それでもオールスターのときに秋には戦うことになるかもしれないパ・リーグの一流選手たちの一挙手一投足を凝視していたという。そうして肌で感じたデータをインプットしてシリーズに臨んでいたわけだ。
しかし、今は交流戦がある。
「エースの球筋はどう変わったのか?」「進境著しい若手に変化はあるのか?」「話題の新人の弱点はどこにあるのか?」――実はグラウンドで繰り広げられる勝負とは別に、水面下では秋に向けた丁々発止の探り合いがこのときすでに始まっているというわけだ。