濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
必要なのは「強者」か「勝者」か?
厳密な判定が生んだUFCの“迷勝負”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byGetty Images
posted2012/07/16 08:02
7月7日、アメリカ・ラスベガスで開催された『UFC148』。セミファイナルの試合後、フォレスト・グリフィン(写真左)は僅差での判定勝利をはぐらかすためか、自らマイクを持ち、引退試合を終えた敗者であるティト・オーティズのインタビューを行なった。
ポイントをも凌駕する“創造的破壊者”の存在。
“創造的破壊者”が登場し続ける限り、格闘技の世界はつまらないものにはならない。さらに付け加えるなら、スポーツとは常に暫定的なものでもある。ルールやレギュレーションは変わり続けるのだ。長い歴史を持つボクシングでさえ、常にルールや採点について議論がなされている。
おそらくMMA(総合格闘技)も同じだ。時間無制限・体重無差別から階級制・ラウンド制に変わったように、これからもルールや採点基準は見直され、変化していくことだろう。ファンにせよ選手にせよ、その一喜一憂はすべて、ベストなルール、システムを探る“過程”の中にあるのだ。
そして、たとえ後味は悪かったにせよ、グリフィンvs.ティト戦は名勝負だった。記録に残るのはグリフィンの勝利。だがファンの心にはティトの強さ、必死の猛攻も残り続けるのである。